先月から新型コロナワクチンの高齢者への優先接種が始まったが、各自治体には「予約の電話が全然つながらない」「高齢なのでネットを使うのは無理」といった声が多く寄せられ、各地では相変わらずのドタバタが続いている。
そんななか、ワクチンを接種する・しないをめぐり、差別的な言動が目立ち始めているというのだ。全国紙社会部記者が語る。
「政府が今回、ファイザーなどのワクチン接種に踏み切ったのは、国内外数万人のデータから、副反応によるデメリットよりも接種により発症を防ぐ効果があるというメリットが勝っていたことは言うまでもない。ただ、接種については法律で『努力義務』と位置づけられているため、厚生労働省としても、接種は強制ではなく『あくまで本人の意思に基づく』としています。つまり、『ワクチン接種をしない』という選択肢もあるわけですね。そこで、一部ではすでにワクチンを接種しない人たちを否定するような事態が起こり始めているんです」
実際、日弁連には「夫から接種しないと別居だ、と告げられた」「上司から接種しないのなら会社を辞めてもらう、と言われた」といった電話相談が寄せられているといい、この話題を特集した25日のフジテレビ系ワイドショー「めざまし8」によれば、職場での集団接種にも同様の懸念が広がっているのだとか。番組に出演している国際政治学者の三浦瑠麗氏は、『ワクチン差別』ともいえるこの現象に「日本の(企業の)管理の仕方を、あまり個人情報を問わないシステムに移行すべき」とし、会社がことさら接種情報を公にしなければ、同調圧力も生まれず差別も起きないだろう、と指摘している。
報道を受け、SNS上では《ワクチン接種はあくまで個人の任意。それで差別なんて考えられない》《希望する人には速やかに接種し、希望しない人はそれでいい!偏見があってはならない》といった意見が多かったが、一方では《ワクチンを打たないなんて信じられない?》《やっぱり、人に感染しないためにもワクチンを打つべき》といった意見もあり、なかには《コロナワクチンはしょせん特例認証で、他のワクチンとは違うため、リスクが高いと考えるべき》と、ワクチンの副作用に疑問を呈す声も少なくなかった。
医療ジャーナリストが語る。
「もちろん、副作用が怖いから接種したくないという人もいるでしょうし、接種したくても出来ない人たちもいます。たとえば、他のワクチンによるアナフィラキシー歴のある人、あるいはmRNAワクチンに含まれるポリエチレングリコールに対するアレルギーがある人などは、副反応の危険性が高いため、打ちたくないのではなく打てない可能性がある。にも拘らず、それをいっしょくたにして差別するなど、あってはならないこと。打たない権利も保障されるべきですし、そのためには政府や医療機関が、もっと積極的にワクチンへの正しい理解を広げるため、十分な情報を届けていく必要があると思いますね」
接種するかどうかは、あくまでも個人の考え方だ。それにより、不当な圧力や不利益が及ばないことを強く願いたい。
(灯倫太郎)