若い頃、周囲の大人にさんざん刷り込まれた健康にまつわる格言を、今も無意識になぞっていやしないか。でも、それは迷信や習慣をもとにした「ウソ」かもしれない。専門家にジャッジしてもらおう!
今や昭和の男も中年世代。下半身や頭髪に関する悩みが切実になっていることだろう。では、昔から言われる「海藻を食べると髪の毛が生える」という健康常識は本当なのか。
「残念ながら毛髪の本数を増やすことはないです」
藤崎メディカルクリニック副院長の佐藤留美医師の無情な回答に肩を落としそうになったが、希望もあるという。
「ワカメや昆布、のりなど海藻類に多く含まれるミネラルは、毛髪の主成分であるタンパク質、ケラチンの合成を促進します。それが髪の毛を強くし、抜けにくくさせるのです」
残り少なくなった髪を維持すべく大量摂取しようと思ったら、それはNG。過度な食べすぎは「海藻に含まれるヨードが甲状腺機能を後進させる可能性もある」(佐藤医師)という。
もう1つ、ハゲには昭和の常識がある。周囲に薄毛を気にして帽子を嫌う人はいるだろう。それは、「帽子をかぶり続けるとハゲる」とされてきたからだが、東京国際大堀病院の病棟医長である村山慎一郎医師によれば、
「蒸れて菌が繁殖すると言われますが、それよりも気にするべきは、帽子の締めつけによる血行不良です。毛根への血流が悪くなり栄養不足に陥る。すると毛髪があまり伸びず細くなっていきます」
とはいえ、あまり帽子を毛嫌いするのもよくないようで、
「帽子には夏の紫外線から頭皮を守り、冬は乾燥を防ぐ役割もある。特に乾燥は薄毛が進行する確率が上がりますからね」(村山医師)
締めつけないサイズの帽子を選ぶのが正解なのだ。
ハゲとともに悩ましいのが白髪だ。だからこそ「白髪は抜くと増える」を頑なに守ってきたのだが、これがウソだったとは‥‥。
「白髪が生えている毛穴からは、抜けてもまた白髪が生えてきます。しかも、ムリに抜くと毛根が傷つき、次に生える毛がくせ毛になりやすい」(佐藤医師)
かくもデタラメな“常識”にとらわれてきたのは、昭和は現在ほど情報入手が簡単ではなかった事情もある。が、やはり親の言いつけを守るという昭和的美徳の影響もあるのではないか。
例えば、幼い頃に「コゲを食べるとガンになる」からと、母親が焼き魚のコゲを除いてくれた経験があるだろう。その親心が忘れられず、今も実践している読者もいるのでは‥‥。
「確かにコゲにはヘテロサイクリックアミンという発ガン性物質が含まれています。が、トーストのコゲぐらいでは、危険性が高いとは言えません」(佐藤医師)
実際、体重の4倍以上のコゲを摂取すれば危険性が増すと言われ、その量は「毎日1トンの焼き魚を100年間食べ続ける量に相当する」(佐藤医師)というから、ガンになる前に別の病気になりそうな量だ。
また、父親が「蜂に刺されたぐらい、ションベンかければ治る」と言う姿を見て、頼もしく思ったものだが、これも「ウソ」だった。
「『アンモニア水をかけると消毒される』というイメージがありますが、アンモニア水にその効果がない上に『尿=アンモニア』という固定観念も勘違い。哺乳類は、アンモニアを肝臓で尿素という物質にしているので、排出した尿にアンモニアは含まれていないのです」(村山医師)
もちろん親が言っていた健康常識の中には「ホント」もある。そのひとつが「風邪をひいたら入浴しない」だ。
「発熱時は汗をかきやすく、湯船に浸かると脱水症状を起こし、悪化することがあります。また血管が拡張して血圧が低くなるので、めまいで倒れることもありえます」(佐藤医師)
また「アトピー性皮膚炎に海水が効く」も限定的ながら「ホント」だった。
「私自身も小児アトピーを持っていて、よく親に海水浴に連れていかれました。海に入ると痒みが治まるだけでなく、海水には皮膚細胞を浄化する作用があり、細菌を破壊することがわかっています。が、患者さんによっては海水の刺激が強すぎることもあるので、ほどほどに」(佐藤医師)
昭和の「常識」をアップデートして、令和を健康に過ごそうではないか。
(つづく)