北海道新幹線、札幌延伸2038年度で「だったら先に…」函館乗り入れ案“地元の賛否”

 トンネル工事の難航などで当初予定していた30年度の札幌延伸の開業が困難となっていた北海道新幹線。開業延期としながらも時期は未定だったが、地元紙「北海道新聞」は昨年12月27日付の記事で「2038年度を軸にその前後で調整」と報じている。

 これに「だったら先にこちらへの乗り入れ実現を!」と期待を寄せる市民が多いのが函館市。23年4月、圧倒的な支持を受けて当選した俳優・大泉洋の実兄の大泉潤市長も公約のひとつに掲げていた。乗り入れに必要な整備費用を函館市が負担するとしたが、JR北海道は難色を示していると言われている。

 だが、最近は大泉市長から函館乗り入れに関する発言はあまり聞かれなくなった。トーンダウンしたのかと思いきや、北海道新聞の別の記事では「水面下で協議中」とある。

 この件について鉄道事情に詳しい全国紙記者は、「乗り入れに前向きでなくても整備費用を負担してくれるならJR北海道としても話し合いの余地はある」と説明する。

 地元で観光業に携わる人々を中心に新幹線の函館乗り入れを熱望する声は多い。「乗り入れが実現し、観光客がさらに増えるのは歓迎」と話すのは、50代のタクシー運転手。函館朝市の鮮魚店の40代の店主も「函館は観光でナンボの街。新幹線乗り入れはぜひやってほしい」と話す。

 しかし、函館市が試算した整備費用160億円に車両費は含まれていない。仮にJR北海道が乗り入れにOKした場合、この金額が増えることはあっても減額することはないだろう。そのため、以下のように拒絶反応を示す市民も少なくない。

「函館はすでに大勢の観光客が来ている。160億円は市民に使ってほしい」(40代・主婦)

「乗り入れ費用を市が負担するのは反対。増えすぎた観光客のせいで市電に乗れない時もある。他にも医療や福祉、教育の充実などやるべきことは他にあるはず」(50代・会社員)

 函館市の実質収支は黒字だが、決して予算は潤沢ではない。それだけに160億円はやはり大金だ。

「乗り入れ工事は5年程度で整備可能のため、札幌延伸の繋ぎとしてとりあえず函館に乗り入れるのは悪い案ではありません。ただ、選挙で大泉市長に投票した市民全員が新幹線乗り入れに賛成したわけではないので…」(同)

 最終的にJR北海道がどのような判断を下すのか、今後の状況を見守りたい。

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