JR北海道の100億円「奇跡の黒字化」が素直に喜べない「カラクリ」

 国鉄から民営化して以降、慢性的な赤字が続いていたJR北海道。だが、2月16日発表の23年4-12月期の連結決算によると、純損益は100億円の黒字。前年同時期のマイナス53億円から劇的に改善したことが明らかになった。

 なかでも鉄道にバス、レンタカーを加えた運輸部門は、前年から96億円増の662億円。コロナ前の19年の92.2%の水準まで回復しており、定期券収入をはじめ、それ以外の在来線や新幹線の運賃収入も目標を上回った。

「韓国や台湾、中国などアジア圏を中心に外国人観光客が急増したこともありますが、昨年5月に新型コロナが5類感染症に移行したことで道外からの旅行客が戻ってきたことが大きいですね」(経済誌記者)

 昨年12月発表の4-9月線区別収支では、全路線で前年同時期から増収。特に札幌近郊の4区間は大きく収益を伸ばしている。

「新千歳空港と札幌を結ぶ、千歳線の増加が目立ちます。沿線の北広島には昨年300万人以上の来場者を記録した日ハムの新球場『エスコンフィールド北海道』があり、同球場への足としてJRを利用する地元の方が増えたことも大きな要因です」(前出・記者)

 それでも運輸部門単体では大きく改善されたとはいえ、まだ372億円の赤字。鉄道以外の事業の柱となっている駅売店やチェーン展開するスーパー「生鮮市場」などの小売部門、札幌駅併設の「JRタワーホテル日航札幌」や道内各所にある「JR INN」のホテル部門が好調でも赤字を補填しきれているわけではない。実は、黒字化を達成できたウラには“あるカラクリ”が大きく関係している。

「決算報告書の特別利益には国からの支援112億円が含まれ、これとは別に円安株高の影響で得た『経営安定基金』の資産運用益40億円も計上されています。つまり、この2つがなければ赤字ということです」(前出・記者)

 毎年のように駅や路線を廃止するなど賢明な経営努力を行っているのは認めるが、そもそも人口の少ない北海道では国の支援なしでは経営が成り立たないのも事実。本当の意味での黒字化にはまだ遠いようだ。

※写真はJR札幌駅

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