新規に製造する場合、1両あたり数億円の費用がかかる鉄道の車両。だが、使用年数が経てばやがて引退の日を迎える。とはいえ、日本でお役御免となった30年、40年落ちの中古車両が海外では今も現役というケースは珍しくない。
直近では昨春まで北海道内で特急車両として運用されていた「キハ183系」の11両が、カンボジアの「ロイヤル鉄道」に売却されている。
昨年も7両のキハ183系がアフリカ中部のコンゴ共和国に、21年には西部のシエラレオネ、21年には17両がタイにそれぞれ輸出されている。
「タイでは22年12月から観光列車として運用されており、現地の人に大好評で、常に満席の人気列車となっています」(鉄道専門誌編集者)
さらに4月12日付の北海道新聞は、来年3月で引退予定のキハ40系も海外に譲渡される見通しだと報じている。ただ、この車両が製造されたのは国鉄末期の昭和50年代。すでに40年以上運用されている古い車両だ。
「車両番号に付いている『キハ』とは軽油などを燃料とする気動車のことで、路線の8割以上が非電化区間のJR北海道は、この気動車を大量に保有しています。海外では欧州などの一部地域を除けば電化されている地域はまだ少ないこともあり、現地の線路幅に合わせた調整など最小限の改造で走らせることができる日本の気動車は人気なんです」(前出・編集者)
また、日本の鉄道車両は造りが頑丈で故障が少ないことも魅力の1つ。さらに、日本の鉄道会社にとっても譲渡するメリットは大きいという。
「車両の解体費用は最低でも1両数百万円。かといって保有し続ければメンテナンス等の維持費に加え、固定資産税も発生します。まとまった車両数であれば無償譲渡でも鉄道会社にとっては大きなコスト削減につながるのです」(前出・編集者)
両者にとってWinWinとなる中古車両の取り引き。今後も多くの国で日本製車両の走る姿が見られそうだ。
※写真はカンボジアに譲渡されたJR北海道「キハ183系」