「ロシアは弱体化している」トランプ氏に突かれたプーチン大統領“アサド政権崩壊”の弱り目

 トランプ氏がハリス氏を破り、次期大統領への就任が決定した11月9日、電話でわずか5分間会談し、「非常にフレンドリーな感じがした」との感想を述べた石破茂首相。しかし、トランプ氏側から「民間人の立場で外国政府との交渉を禁じた米ローガン法に抵触するため、大統領就任前には外国要人と会談しない方針」との意向を伝えられ、会談を断念したと発表していた。

 しかしトランプ氏は、14日にはすでにアルゼンチンのミレイ大統領と会談。その後も電話ではあるものの、各国首脳と「中身のある会談」をしているとも伝えられている。

 そんな、「外国要人とは会談しない」と公言していたトランプ氏が、当選後初の外遊先としてフランスを訪問し、マクロン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領と12月7日に3者会談を行った。

「トランプ氏のフランス訪問はノートルダム大聖堂の再開式典に出席するためですが、その席で3者会談を行っており、会談後ゼレンスキー氏はSNSに《我々は皆、この戦争ができるだけ早く、公正な方法で終わることを望んでいる。ウクライナ国民、現場の状況、そして公正な平和について話し合った。我々は一緒に取り組み続け、連絡を取り合っていくことで同意した》と投稿しています。一方、トランプ氏も翌8日、《ロシアは弱体化している。ゼレンスキー大統領は合意を結び、狂気を止めたいと考えている》と自身のSNSに投稿。ただ、選挙戦中に『大統領就任から24時間以内に戦争を終わらせる』と宣言したトランプ氏に対し、一部報道ではマクロン氏とイギリスのスターマー首相が、ウクライナ支援での軍隊派遣強化について議論を活発化させているとの情報も飛び交っている。来年のトランプ氏就任で欧米の足並みが揃うかどうかが焦点になるでしょう」(外報部記者)

 さらに、そんなタイミングで明らかになったのが、2015年以降ロシアが支援してきたシリア内戦におけるアサド政権崩壊を伝える衝撃的な報道だった。シリアでは11年から大規模な民主化を求めるデモが起こり、アサド政権がこれを武力弾圧。それが皮切りとなって政権側と反政府勢力との激しい内戦が続いていた。しかし、ロシアからの軍事支援を得たアサド政権は反政府勢力の支配地域を次々に奪還。ただ多くの民間人を巻き込む政権側のやり方に、国際社会からは非難の声が上がっていた。

「その後、20年にはアサド政権のバックにつくロシアと反政府勢力を支援するトルコが停戦合意を交わし、戦闘は膠着状態となっていたものの、内戦は相変わらず続いていたんです。ところが22年にロシアのウクライナ侵攻が始まり、プーチン大統領としては対ウクライナで手一杯で、とてもではないがシリア内戦にまで手を差し伸べることができなくなった。シリアに派兵されていた兵士や兵器もウクライナ戦争に投入されることになり、アサド政権が弱体化していったというわけなんです」(同)

 トランプ氏は8日のSNSで、《アサドは去った。後ろ盾のロシアも守ろうとしなかった。ウクライナ侵攻でシリアへの関心を失った》と投稿。ウクライナ問題についても《直ちに停戦し、交渉を始めるべきだ。このままではもっと悪い事態に発展しかねない。(プーチン氏は)今こそ行動を起こす時だ》と強調、プーチン氏にメッセージを送っているが、もちろん交渉が一筋縄で行かないだろうことは、想像に難しくない。

 シリア内戦から手を引き勢力を一本化させたロシアに対し、トランプ氏はどんなディールを仕掛けるのか。トランプ氏の一挙手一投足に世界中の視線が注がれている。

(灯倫太郎)

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