「ロシア版マクドナルド」が撤退前の本家の店舗数を上回っていた“驚異の増殖”と“危うい品質”

 2022年5月、ウクライナ戦争に抗議する形でロシア国内から撤退したマクドナルド。当時、現地には850店舗があったが、一部店舗をそのまま居抜きで使用する形で同年6月から営業を始めたのが、ロシア語で「おいしい、それだけ」を意味する「フクースナ・イ・トーチカ」だ。

 メニュー構成や同じ「M」の店名ロゴを使用していたことから“偽マック”と呼ばれ、開業当初は日本のメディアでも紹介されていたので覚えている方も多いだろう。だが、あれから2年が経ち、今では取り上げられることもほとんどない。

 そこで現在の状況を調べてみると、順調に店舗数を拡大。ウラジオストクなどの極東、ポーランドとリトアニアに挟まれた飛び地のカリーニングラードにも進出し、ロシア最大の外食チェーンとなっていたことが明らかに。しかも、トーチカ社のホームページの店舗情報を確認すると900店舗を超えており、すでに撤退前のマクドナルドを上回っていたのだ。

「実は、22年夏の時点で100店舗を突破していました。その後もマクドナルドの空きテナントを使用しているので改修工事も必要最低限。スタッフも再雇用し、時間もお金もほとんどかけずにオープンしたため、短期間での拡大が可能だったんです」(ロシア事情に詳しいジャーナリスト)

 運営会社は当初、「開業から5年以内に1000店舗」という目標を掲げていたが、今のペースなら達成する可能性は極めて高そうだ。

「ただ、創業当初から使用するバンズにカビが見つかるなど品質管理が問題視され、店舗によってクオリティに差がありすぎるなどオペレーションにも不安を抱えています。それでもライバルとなりうる西側諸国のファストフードチェーンが撤退している以上、トーチカ社を脅かす存在がないのが現状です」(同)

 戦争が終結し、マクドナルドがロシアに再上陸しない限りは安泰なのかも。

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