「ロシア仲介」以上の衝撃!習近平の高笑いが聞こえる「サウジ・イラン国交回復」の行方

 中国の仲介で、サウジアラビアとイランが和平合意を結んだ、というニュースが世界を駆け抜けたのは3月10日のことだ。

 サウジアラビアとイランは、イエメン内戦などで互いに敵対勢力を支援。その対立が中東地域の不安定化を加速させる要因になってきた。

「両国が断交したのは、2016年にサウジでイスラム教シーア派の指導者が処刑され、それをきっかけにイランの首都・テヘランにあるサウジアラビア大使館が襲撃されてから。その以前より、シーア派が多いイランとスンニ派が多数のサウジは対立してきました。2019年には、サウジアラビアの石油施設がイラン製ドローンで攻撃されたことを受け、両国関係はさらに緊張が高まりましたが、一方、双方ともに石油の最大輸出先である中国へは接近を図ってきた。その結果、今回の中国による歴史的仲介に繋がったと見られています」(全国紙記者)

 習近平主席は昨年12月、サウジアラビアを訪問し蜜月ぶりを印象付ける一方、欧米などから厳しい制裁が科されているイランに対しても2021年に、経済や安全保障などを含む包括協定を25年間にわたって締結することで、イラン産原油の最大手輸出先として緊密な関係を確立した。

「もちろん今回の和平合意で即、サウジ・イランの長年にわたる対立が解消されるわけではないものの、両国の代理戦争化していたイエメンでの戦争終結が実現すれば、中国に対する中東諸国全体の見方も変わります。つまり、この仲介はある意味、ロシアのウクライナ侵攻を仲介する以上のインパクトがあると言っても過言ではないということです」(同)

 さらに、今回の中国による和平仲介における最大の効果は、とりもなおさず米国に対するプレッシャーである。国際ジャーナリストが語る。

「というのも、サウジアラビアはアメリカにとって長年の『戦略的パートナー』であり、一方のイランは半世紀近くに渡りアメリカが敵視してきた国。この両国を和解に導いたわけですから、アメリカとしてはメンツが丸つぶれ。アメリカは2015年に、ロシアのシリア内戦への軍事介入を許して以降、中東における影響力が著しく低下していました。アフガニスタンとイラクの失敗もしかり、おそらく今回の件で中東において頼れる唯一の超大国ではないといったイメージが拡大したはずです。しかも、中国はアメリカと違い、貿易協定を結ぶ際に相手国の政治体制や人権問題などを問題にしないため、世界の半数を占める『グローバルサウス』と言われる途上国にとっては、非常に魅力的に映るはず。つまり、今回の中国による仲介は、アメリカが長年にわたって世界各国で行ってきた軍事・政治・経済支援といった長期的つながりを、一瞬でかき消すほど強烈なインパクトを与えてしまいました。習近平主席の高笑いが聞こえてきますね」

 安全保障面から地域の秩序を保ってきた米国に対し、経済力のみを通じて影響力を行使しようとする中国。習主席が「一帯一路」の前身となる「シルクロード経済ベルト」構想を掲げてから今年でちょうど10年目。さて、習氏が目指す先にあるものは……。

(灯倫太郎)

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