毎年のように駅や路線の廃止が相次いでいる北海道。来春もすでに複数の駅が廃止になる見通しだが、なかでも注目は“日本最北の秘境駅”としても有名なJR宗谷本線の抜海駅(稚内市)。地元自治体が管理費用を負担することで存続していたが、25年度以降は費用を負担しないことが明らかに。これを受けて正式発表はまだ行われていないが、廃止はほぼ避けられない状況だ。
ちなみに駅周辺には民家が1棟あるだけ。駅から約2㎞離れた抜海港周辺に集落はあるが、JR北海道が公表する18~22年の1日あたりの「駅別乗車人員」は2.2人。無人駅としては全国最北に位置し、鉄道ファンのみならず一般の旅行者も訪れる観光名所となっている。
趣のある木造駅舎は、何度も改修工事を行っているが開業した1924年当時のものを使用。これだけでもかなり貴重だが、さらに同駅は小泉今日子主演のドラマ「少女に何が起こったか」(TBS系、85年)、高倉健主演の映画「南極物語」(83年)、吉永小百合主演の映画「北の桜森」(18年)の撮影にも使用されている。つまり、名作ドラマ・映画の舞台となった聖地でもあるわけだ。
ちなみに抜海駅に停車する列車は上下線合わせて1日わずか7本。付近にバスは走っておらず、鉄道でのアクセスは秘境駅の多い北海道でもトップレベルの難易度だ。記者は前日に稚内入りし、翌日10時28分稚内駅発の1両編成の普通列車に乗車。2駅先の抜海駅には10時46分に到着した。
記者のほかにも3名の鉄道ファンらしき若者が下車し、写真や動画をひたすら撮りまくっていた。夏休みを利用して北海道を鉄道旅行中の20代の男性会社員に話を聞いたが、「廃止は仕方ないがやっぱり残念。歴史のある駅なので駅舎は残してほしい」と語っていた。
沿線の大半が無人駅で秘境駅化しているケースが多い宗谷本線は、21年以降だけで15駅が廃止。ただし、抜海駅の築100年の駅舎は鉄道遺産としの価値に加え、聖地巡りの観光スポットとしての需要もある。維持費などの問題があるので簡単ではないが、駅舎の保存についてもぜひ検討してもらいたいものだ。
(高島昌俊)