真冬の「秘境駅」でまさかの終日運休、マイナス15度の窮地を救ったのは…

 暖冬続きから一転して記録的な大雪となった今年の冬。特に鉄道は終日運休となる路線も多いが、地方のローカル線では代行バスの運行そのものがないことも珍しくない。

 利用者が少ないので困る人はあまりいないのかもしれないが、仮に秘境駅で列車が運休になったらそれこそ一大事。実は、筆者は以前、身をもってそれを経験したことがある。

 このとき筆者が向かったのは、今年3月に廃止になる宗谷本線の北星駅(北海道名寄市)。1日の平均乗降客は0人台で、つまり1人にも満たない。駅の周辺には農家が1軒あるだけという同路線でも屈指の秘境駅だ。

 名寄市の中心部からは10数キロ離れており、市内のホテルを早朝チェックアウトして駅までタクシーで移動。駅からはそのまま列車に乗って次の目的地に移動する予定だったが、なんとまさかの終日運休。その事実を知ったのは北星駅に到着後のことで、乗ってきたタクシーはとっくに去ってしまっていた。

 しかも、あまりの秘境ぶりからバスは乗り入れておらず、最寄りのバス停まではなんと3.5キロ。いくら待っても列車は来ないので仕方なくバス停まで歩くことにしたが、さっきまで小降りだった雪はいつしか本降りに。道も幹線道路から外れているせいか積もっていて歩きにくい。気温はマイナス15度と冷凍庫並みだし、寒冷地仕様の防寒具フル装備でも寒い……。

 当然、土地勘なんてものはなく、道に迷ったらそれこそ生死にかかわる一大事。吹雪き始めて視界も悪く、このときほどスマホの地図アプリのありがたみを感じたことはない。

 途中、道を間違える場面もあったが1時間ほどでなんとかバス停に到着。タイミングよくほとんど待たずにバスが来たが、列車は運休になってもこちらは悪天候でもほぼ定刻通り。鉄道のように線路の維持管理に莫大なコストがかかることもないし、最強の交通インフラはバスなのかもしれない。

 いずれにしても秘境駅で運休となれば脱出するだけでも大変。沿線の雪景色は素晴らしいが、冬場に雪国の秘境駅を訪れるのは避けたほうがいいのかもしれない。

(高島昌俊)

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