AIブームで大躍進だ。AI向け半導体開発・販売の「エヌビディア」の時価総額が3兆3300億ドル(約525兆円)を超え、それまでトップだったマイクロソフト(MS)を抜いて世界一の企業となったのが6月18日のこと。ところが20日には、エヌビディア株が3.5%以上下げて、MSが再逆転。iPhoneにAI機能「アップル・インテリジェンス」を搭載させるアップルも3兆ドル台で首位を伺っており、この分野は、まさに生き馬の目を抜くという表現がピッタリの様相を呈している。
「エヌビディアはこの5年間で株価4000%上昇という、時代の寵児です。AI半導体の市場シェアは約90%で、他の追随を許しません。特に収益率が高いのが同社の特徴で、1株当たりの純利益を表す指標の株価収益率(PER)は、過去1年間のベースだと76倍で、MS、アップルの2倍という高い数字になっています」(経済ジャーナリスト)
そこにきての株価下落だが、市場は「通常の変動レベル」(同)との見方が大方で、両社のもみ合いはしばらく続き、ツバ迫り合いは一層激しくなることだろう。というのも、現状はエヌビディアの独走を許す形になっているが、アメリカのIT専門メディア「ジ・インフォメーション」が、MSが“脱エヌビディア支配”を水面下で進めてきたことを報じているからだ。
「MSは既に2019年から、『アテナ』というコードネームのAI向け半導体の開発を進めてきたのです。AI向け半導体の独自開発では、グーグルでも進められています」(ITジャーナリスト)
だが同メディアによれば、今後の戦いの場は、半導体チップのみならず、チップを用いる“規格”に移行しつつあるという。
「エヌビディアが、同社の次世代AIチップである『ブラックウェル』を同社の規格下でサーバーに設置するよう供給先に求めていたところ、MS側が拒絶したという動きがあったというのです。“規格”という川上を押さえれば、おのずと川下で用いられるチップも限られます。つまり、その分野で両者の対立が今後、激化するのではないかというわけです」(同)
最新IT企業における激しい新旧対立はGAFAを巻き込んで行われることになり、エヌビディアが今後も躍進できるか否かが同時に問われることになるだろう。
(猫間滋)