「中国製EVに関税100%」 バイデン大統領の同調圧力に屈する日本が中国に食らう“しっぺ返し”

 米中による貿易戦争は激しくなる一方だ。バイデン大統領は5月14日、中国製EVへの関税を現行の25%から4倍になる100%に引き上げる方針を明らかにした。米国は中国が補助金などを活用し、安いEVを大量生産してそれを外国に売り捌こうとしていることを強く警戒しており、今回の措置はそれへの対抗措置と言えよう。

 また、車載用電池、太陽電池、鉄鋼、アルミニウム、旧型のレガシー半導体、注射器や手術用ゴム手袋など医療製品の関税も引き上げられ、今回の関税引き上げ対象となる品目の総額は日本円で約2兆8000億円となる。

 これはバイデン政権、もっと言えば米国の本気度を示すものとなる。米国では議会だけでなく国民の間でも中国警戒論が広がっており、バイデンとトランプのどちらが秋の選挙で勝利しても、米国の対中強硬姿勢は長期的に続く。米国は軍事転用可能な先端半導体を中国が入手することを防止するため、一昨年秋からは先端半導体分野での対中輸出規制を強化しているが、安全保障に関連する分野での規制は今後いっそう強化されるだろう。ここに妥協の余地はない。

 一方、中国では最近になって関税法が可決され、今年12月から施行される。関税法は、中国に対して不当な貿易規制を仕掛けた国家に対して報復関税を課すことを明記しており、中国も“やられたらやり返す”姿勢を堅持している。

 このように米中両国が絶対に譲らない状況は、日本にとって都合が悪い。一昨年秋、米国は先端半導体分野で規制を強化した際、半導体の製造装置で世界をリードする日本に対して足並みを揃えるよう同調圧力を掛けた。その後、日本は米国の要請に答える形で昨年7月より中国への輸出規制を開始したが、中国の日本への不満が膨れ上がることになった。昨年8月、中国は日本産水産物の輸入を全面的に停止したが、それは米国と足並みを揃える日本への不満の現れと言えよう。

 中国製EVに対する関税100%は、米国の対中不満が100%の状態にあることと等しい。今後とも中国に対する貿易規制で、米国が日本に同調圧力を掛けるケースは多々あろうが、それによって中国は日本を米国と同一視するだろう。日本は米中のアリ地獄から抜け出せなくなる。

(北島豊)

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