「中国製」がシェア席巻! 世界で加速する「風力発電シフト」に広がる重大懸念

 不安定なウクライナ情勢により、世界の液化天然ガスや原油価格の上昇が止まらない。

 日本でも、岸田文雄首相が「わが国の消費者物価上昇は、ほとんどがエネルギーと食料品価格の上昇」としているが、日本の場合、ロシアに対するエネルギー依存度は石油が4%、天然ガス9%、石炭11%(今年5月時点)程度だが、エネルギー資源の9割を輸入に頼る日本にとって今後、世界のエネルギー市場価格の高騰はダイレクトに物価に跳ね返る大問題となる。

 そんな中、日本を含め世界が将来の主力電源として期待を寄せているのが、風力発電だが、その風力発電の市場をいま、中国メーカーが席巻しつつあるというのだ。

「国際団体の世界風力会議(GWEC)の発表によれば、2021年度の洋上風力発電所の新設量は前年比の3倍。それをけん引するのが中国で、21年の新設量は中国だけで世界全体の8割を占めています。そのため、中国メーカー製の風車のシェアがものすごい伸びを示しており、調査会社ブルームバーグNEFによると、2017年には上位10社のうち3社だった中国企業が、20年の調査では7社に増え、全体の受注量の5割を占めるまでになっています」(経済ジャーナリスト)

 翻って日本では、風力発電機の製造はコスト面から、すでに主要製造メーカーである日立製作所や日本製鋼所が事業から撤退。現在の風力発電関連の国内製造シェアは10年前の1割以下と、再エネ推進の方針から逆行しているという。

「そんな中、政府は昨年、洋上風力を再生エネルギーの主力電源にするとして、現状の電源構成で0.9%しかない風力発電を5%にまで拡大すると目標を定めています。となれば今後、風量発電先進国である欧州のほか、価格の安い中国メーカーが日本市場でシェアを拡大させる可能性も否定できないというわけです」(同)
 
 そこで浮上するのが、国の根幹であるエネルギーインフラを他国に依存していいのか、という問題である。しかも中国は日本とは全く違う権威主義国家で、現在も緊張関係にある国だ。

「たとえば、中国のメーカーに製造・運営を任せている最中に、台湾有事が起こった場合、発電を止められる恐れがあるのではないか。あるいは風力発電の機器にレーダーを妨害するようなシステムが埋め込まれる、などということも絶対にないとは言えない。つまり、リスクを冒してまで、中国のメーカーに頼るメリットがどこにあるのか、ということです。中国はいまや太陽光パネル生産量は世界一、風力発電でも世界トップの一角です。それは中国政府が再エネへ莫大な投資をしてきたから。日本はそれが民間だのみで、しかも採算が取れないから産業としてなかなか育たない。世界では『再エネ戦争』『ガス戦争』という言うべき綱引きが始まっています。日本はそれに乗り遅れてはいけない。再エネの推進は経済安保の最重要課題なのです」(同)

 資源のない国として喫緊のエネルギー問題。“検討使”岸田首相はどんな決断をするのか。
 
(灯倫太郎)

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