ギャラ倍増でもお断り!? 大阪万博・夢洲に建設作業員が集まらない理由

「元請けのゼネコン社員は対外的に『絶対に間に合わせます』と体裁を繕ってはいますが、現場の作業員から聞こえてくるのは『無理でしょ』という諦めの声ばかり。でも『間に合わない』とはさすがに言えないので『間に合わせるよう努力します』が合言葉。人手が圧倒的に足りないので、相場のギャラの倍増を提示して募集をかける二次請けも出てきたそうですが、労働環境が最悪ですぐに辞めていく。辞めては入れて、入れては辞めていくという悪循環です」(大手紙社会部記者)

 25年4月の開催を控える大阪・関西万博の会場・夢洲では現在、急ピッチで工事が進められているが、人手不足の要因に挙げられるのが、交通の便の悪さだ。現地で働く作業員の一人はこう嘆く。

「夢洲には大きな荷物を抱えてバスで通っている者も少なくないが、ほとんどは会社のバンに乗り合わせて通勤している。それでも通行していい道路とそうでない道路があって、島内は大混乱。島にはコンビニが1軒しかないから、弁当や飲み物を忘れたら一大事。下手したら昼抜きで働く羽目になる」

 夢洲の工事現場には仮設トイレや水道など、最低限のインフラが整ってはいるものの、現在、大阪駅前の大規模再開発やマンションの建設ラッシュなどもあり、「わざわざ夢洲で働こうなんてヤツはいない」(前出・作業員)とのこと。一方で、「やってられない」と夢洲の現場を抜けた元作業員は、「撤退」の理由をこう明かした。

「自分は一人親方でやってるから、1年の売上は1000万円にも満たない。いわば免税事業者だったんだけど、仕事を発注してきた二次請けがインボイス制度に登録するよう、しつこく言ってきてね。インボイスで課税事業者になったら、消費税を納めなきゃいけなくなるから、『ふざけんな!』って途中で抜けさせてもらった。いちばん大きいのはモチベーションの問題。みんな言ってるよ。『万博が終わったらどうせ壊すんだろ?』とか、『どうせ半年しか使わないだろ?』ってね。潰すことを前提にしているんだから、作業員としてはやりきれない気持ちになるよ」

 会場建設費の上振ればかりが取りざたされる大阪・関西万博だが、問題はカネだけではないようだ。

(北村孝三郎)

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