問題はコストや企画だけではない。会場内に設置予定のインフラ設備にもトラブルの種が潜んでいる。
「来年1月に設置予定の上下水道設備がパンクする可能性がある。というのも、1日の処理能力は約8万人と言われていますが、万博で想定されている1日の平均来場者数は15万人です。最大20万人以上の来場者を見込んでいるだけに処理が追いつかなくなるのは目に見えていますよね。例えば、会場内のトイレは汲み取り式で“肥溜め”よろしくタンクに溜めるしかない。夜通しバキュームカーを走らせて処理施設に運ぶしかないでしょう」(桜田氏)
せめて、異臭騒ぎが起きないことを願うばかりだが、会場内には「もしも」の時の備えも十分とは言い難い、という声が轟々と。元大阪日日新聞記者でジャーナリストの木下功氏が警鐘を鳴らす。
「昨年末に日本国際博覧会協会が公開した『防災基本計画』によると、災害時に会場と隣接する舞洲と咲洲の一時避難施設に避難するプランが想定されていますが、いずれも液状化の可能性が高いエリアで安全性が担保されていません。そもそも、夢洲から外へのアクセスは『夢舞大橋』と『夢咲トンネル』しかないため、ピーク時に20万人を見込む来場者をスムーズに逃がせるかどうか、防災の専門家も首をかしげています」
一応、今夏に「防災基本計画」の改訂版が出る予定だが‥‥。
「世界中の要人が集まる一大イベントだけに、防災計画が昨年末の延長線上のものでは大阪ひいては日本が信頼をなくすことになりかねません」(木下氏)
もっとも、会場内を防災拠点にする計画も見当たらない。
「大阪市会の本会議で避難と名のつく防災予算が複数ありましたが、万博関連のものは確認できていません。避難施設のみならず、食料や飲料水の備蓄、医療体制を整えるためにも新たな費用が発生します。現状、物価上昇に備えて用意していた予備費130億円を充てるしかないでしょう。不幸中の幸いで、一部の海外パビリオンが撤退したおかげで避難施設を建設する場所は確保できるかもしれませんが‥‥」(木下氏)
その割を食うのは子供たちのようで、
「大阪府に住む4歳から高校生計約104万人が無料招待される予定です。もちろん、府外の修学旅行生もたくさん訪れるでしょう。遠足や校外学習として土日や夏休みに行うわけにはいきませんから、平日に集中することが想定されます。ところが、団体休憩所の収容人数はわずか2000人。防災計画はもとより、子供たちの安全に配慮した仕組みなしでは万博を中止にするべきです」(寺本氏)
兎にも角にも安全が第一。さすがに無為無策のままに来年の開幕を迎えることだけは願い下げにしたいものだ。
*週刊アサヒ芸能5月7日号掲載