「BTSvs習近平」2030年の万博誘致で両者のバトルが浮き彫り

 五輪、サッカーワールドカップと並んで世界3大イベントとされる万博。日本では25年に大阪・関西万博が控えているが、世界は既に先を見越して動いている。

「30年の開催都市レースが11月の決定に向けて本格化、今後、大詰めを迎えようとしています。最初は5都市が名乗りを上げていましたが、ロシアのモスクワとウクライナのオデッサは当然撤退して、最終的にはサウジアラビアのリヤドとイタリアのローマ、そしてアジアからは韓国の釜山。この3都市の間で誘致合戦が繰り広げられています」(経済ジャーナリスト)

 韓国では6月に活動休止を宣言したBTSが誘致の観光大使を務め、前面に立つ。宣言以後はメンバーが一堂に揃う唯一の役割となっているため、ファンにとっては貴重な場所だ。しかも10月には釜山で10万人規模の万博誘致祈願の無料コンサートを開催するというから、官民挙げての力の入れようだ。最年長メンバーのJINは30歳を迎えて兵役先延ばしの限界で、これを免除するか否かでほぼ国論が二分するなど、政治・社会に与える影響も大きい。

 強力な対抗馬としては、オイルマネーが潤沢なサウジのリヤドが立ちはだかる。すると中国がサウジ“応援団”として名乗りを上げて、図らずも「BTSvs習近平」の構図が出来上がったとか。

「9月5日、サウジの国王に宛てて習近平が親書を送ったのですが、そこには中国としてはサウジの万博誘致を推すと書かれていたと、サウジの地元メディアが報じたのです。11月の決定では、万博の国際機関に加盟する170カ国の投票で決まりますが、一帯一路政策でチャイナマネーをバラ撒いているので、先進国以外の国々は中国に追随する可能性が高いので、強力な後押しになります」(同)

 このところの国際社会は、QUAD(日米豪印戦略対話)やAUKS(米英豪3国軍事同盟)など、中国の膨張を牽制するための枠組みが盛んに喧伝され、国際的なパワーゲームが過熱している。するとアメリカとの距離の取り方でサウジと中国は同調、両国はこのところ急接近している。

 一方では昨今、中国では「娘炮 (ニャンパオ=中性的イケメン)など奇怪な審美意識を廃絶する」と韓国アーティストに当てつけるような締め付けを中国芸能界に通達。また昨年9月には、中国のARMY(BTSファン)がメンバーJIMINの誕生日を祝うため、交流サイトで金を集め、JUMINの写真とお祝いメッセージがラッピングがされた航空機を飛ばしたところ、ARMYの中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」のアカウントが突如停止される事態が起きている。習近平政権が示した、熱狂的なアイドルファンの妄動を戒めるとの方針に、「微博」が従った形だ。
 
 コンテンツパワーでビルボードチャートのトップを仕留めたBTS人気は、果たして政治の世界におけるパワーゲームに対抗できるや否や。

(猫間滋)

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