プリゴジンが吐露していた「死の予感」とワグネル残党「プーチンへの復讐」の行方

 やはり、墜落した自家用ジェット機に搭乗していたのは、プリゴジン氏本人だったのか。
 
 27日、ロシア連邦捜査委員会は、遺伝子検査の結果、23日の墜落事故で死亡した10人の身元が全員飛行機搭乗者リストと一致したとして、プリゴジン氏の死去を公式に確認したことを明らかにした。
 
 この発表を受け、ロシア政府のペスコフ報道官は、巷で噴出するプーチン大統領の関与説を「完全に嘘だ」と改めて完全否定。数週間以内に故郷であるサンクトペテルブルクで開かれる予定のプリゴジン氏の葬儀にプーチン氏が参列するかどうかは、多忙を理由に「現段階では明らかにできない」としている。
 
 現在もサンクトペテルブルクのワグネルセンター前には、花束を手向ける市民の姿が後を絶たないが、そんな中の26日、ワグネルに近いテレグラムチャンネル「グレーゾーン」は、軍事ブロガーが生前のプリゴジン氏をインタビューした約40秒の映像を公開。ここでの発言が波紋を呼んでいる。
 
「ロイターなどの報道によれば、この映像は4月29日に公開されたもので、プリゴジン氏が、ロシア軍指導部を批判するお馴染みの内容なのですが、その中で同氏は『我慢の限界だ。なぜ正直に話すのか。私には、これからこの国で生きていく人に嘘を言う権利はないからだ』と怒りを露わにしています。そして『ロシアは大惨事の瀬戸際にある。いま歯車を直さないと空中分解してしまう』と訴え、『(真実を語るのをやめさせたいなら)私を殺した方がいい』と激しい口調で続けているのです。この動画が配信されたのは反乱の2カ月前ですが、軍部に対しても殺すなら殺してみろと挑発し、自身もいつそれが実行されてもおかしくないとしています。また、『空中分解』という言葉が、今回の墜落事故を予感させると話題になっているのです」(ロシアウォッチャー)

 ところで、今回の捜査委員会による発表を受け、指導者を失ったワグネル内部でも、さまざまな動きが起こり始めているという。

 ワグネルの兵士数名を取材した、ロシア独立系メディア 「アイストーリーズ」によれば、ワグネルには20人で構成された司令官会議というものがあり、兵士は全員、そこからの指示を待っている状態で、仮にGOとなった場合は「モスクワへの再進軍も否定はできず、ロシア政府への復讐に出ることも否めない」と報じている。
 
 さらに、元ワグネルの指揮官の談話を伝えたメディアによれば、ワグネルには、プリゴジン氏ら幹部が死亡した場合に自動的に発動する“行動計画”が存在し、指揮官が部隊から姿を消した場合には、自動的にその行動計画が機能するようになっていると伝えている。

「現在、ワグネルの戦闘員はその大半がベラルーシに移動。その数は7000人余りと言われています。ベラルーシに移動後、ワグネルは法人として会社登録し、訓練を行っていますが、プーチン氏は飛行機が墜落した2日後の25日、非正規軍を含め、すべての軍事任務を遂行する者に対し、ロシア連邦に忠誠を誓うことを義務付ける大統領令に署名したばかり。ただ、これはプリゴジン氏亡きあと、ワグネルを管轄下に置くための措置であると考えて間違いない。一方、ルカシェンコ大統領も『ベルタ通信』のインタビューで、『ベラルーシの軍人はワグネルの戦闘員たち、特に特殊部隊の戦闘員たちの経験を積極的に吸収している。私たちがこの軍隊を必要とする限り、彼らは私たちと共に暮らし働く』として、ワグネルを手放すつもりはないことを強調しています。つまり、プーチン氏に対し反旗を翻すかどうかも含め、まだ利用価値があるワグネルを巡り、両国の間で攻防戦が繰り広げられることになりそうです」(同)

 カリスマ的指導者を失ったワグネルが進む道は…。

(灯倫太郎)

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