「そう遠くないうちに、われわれが勝利を収める姿が見られるよ。戦場の最前線でね」
そんな音声メッセージを残し、消息がぷっつりと途絶えてしまったワグネルのプリゴジン氏。5日にはロシアの政権寄り大手紙イズベスチヤが、サンクトペテルブルクのプリゴジン氏の邸宅を家宅捜索した際の画像と動画を公開。そこには大量に積まれた札束やインゴッド、さらには変装に使うとみられるカツラやヒゲ、偽造パスポート、そして室内には、切断した頭部を並べて撮影したおぞましい写真が飾られていたことは、すでに伝えられている通りだ。
ロシア政府は「ブリゴジンの乱」を受け、国家親衛隊の強化に全力を挙げているという。
「国家親衛隊というのは2016年に国内治安を守るために創設されたプーチン大統領直属の組織で、最大の目的がプーチン政権を脅かすものを排除すること。現地日刊紙ヴェドモスチは、警察長官がロシア連邦麻薬取締局の特殊部隊を、国家親衛隊に配置転換することを検討していると報じていますが、なにせ多くの軍人がウクライナ戦争に駆り出されていることもあり、国内の治安を預かる部隊の人員不足は否めない。そこで、苦肉の策として他の組織から引き抜いて国家親衛隊に充てるという計画が持ち上がったようです」(ロシアウォッチャー)
ところが、それと時を同じくして、反プーチンのロシア人民兵隊がロシア本土攻撃を予告し、クレムリンに大きな緊張が走っているという。
「これは、英ガーディアンの日曜版『オブザーバー』紙が8日に伝えたもので、反政府のロシア人武装集団『自由ロシア軍団』の指揮官兼報道官がインタビューに答え、『来月ごろにまた別の奇襲があるだろう。われわれの3回目の作戦にあたり、4回目、5回目が続く』と語っているのです。同報道官は『プリゴジンの乱でプーチンの力は弱体化しており、現政権は2024年の年末もまたずに瓦解する』とも予告しています」
通常であれば、反政権派のプロパガンダと聞き流すような内容だが、なにせプリゴジンの乱で、ロシア国内の治安維持ができていないことが見事に炙り出されてしまった直後。モスクワ進軍をみすみす許したことにプーチン大統領も驚愕したに違いない。
「今のロシア軍は90%以上の兵士がウクライナへ投入されているため、国内の地上戦闘を戦える部隊がいないのが現状で、それがプリゴジンの乱で白日の下にさらされてしまった。つまり今、ロシア国内でワグネルに続く武装組織の反乱や大きなテロが起これば、それを制圧する部隊がいない。内部から『政権が崩壊する』というシナリオも、まんざらデタラメではないということです」(同)
ロシアのペスコフ大統領報道官は、反乱後、プーチン氏とプリゴジン氏が会談したことを明かしている。しかし、その後のプリゴジン氏の行方は杳としてしれない。
(灯倫太郎)