プリゴジンを侮辱!「プーチン発言」にワグネル幹部「激怒」で新たな反乱の火種

 かつて部隊の長であり、カリスマ的最高責任者の死去が、自らの過失によるものだったと一方的に宣言されたら…。おそらく、その下で命を張って戦っていた兵士たちは怒りがこみ上げてくるのではないだろうか。

 今月5日、ロシア南部ソチで開催されたバルダイ・クラブ討論会の会合で、プーチン大統領が、8月に起きたワグネル代表のプリゴジン氏らを乗せた飛行機の墜落事故について言及。「数日前に、犠牲者の遺体から手榴弾の破片が見つかったと調査委員会から報告があった」と述べ、「飛行機への外部からの影響はなかった。これは揺るぎない事実だ」と主張したことで、ワグネル内部に憤りの声が広がっているという。

 この墜落事故では、プリゴジン氏のほか搭乗していた7人全員が死亡。墜落後、政府は関係機関に調査を指示。ロシア大統領府は一貫して関与を否定してきたが、確かに現時点で関与を示す具体的な証拠はなく、公式には墜落の原因は不明のままだ。
 
「ただし、調査に当たっているのは政府機関のロシア連邦保安局(FSB)と警察ですからね。なので、都合の悪い証拠が出てくるはずはないでしょう。プーチン氏の言葉を借りれば、搭乗した誰かが手榴弾を機内に持ち込み、それが誤って爆発したというわけですが、これではあたかも責任はすべてプリゴジン氏及びワグネルにあるということ。ワグネルに残る幹部をはじめ、部下たちも怒り心頭のようです」(軍事アナリスト)

 しかもプーチン氏は、「我々はFSBが(プリゴジン氏の自宅で)現金100億ルーブルだけでなく、コカイン5キロを見つけた事実を知っている」と、ワグネル反乱事件後、サンクトペテルブルクの同氏の自宅から多額の現金などが見つかったことを改めて引き合いに出し、「残念ながら犠牲者の血液からアルコールや薬物使用を確認できる検査を(ロシア当局が)行っていない」と、飛行機内でワグネル幹部たちが酒や薬物を使用し、何らかのアクシデントがあり手榴弾爆発事故が起きた可能性をも暗にほのめかしたのである。

 このプーチン発言に対し、ワグネル現役幹部たちは、プーチン氏を名指しこそしないまでも、一部メディアやSNSで「弾薬の仕組みも手榴弾の仕組みも知らない者が何を言う」「爆発物を機内に持ち込めるはずがない」「言葉が見つからない、無礼だ」と猛反論。
 
「現在、ワグネル・グループの創設者であるプリゴジン氏の息子パベル氏が、引き継ぐ形でウクライナ侵攻に参加すると言われていますが、現場で指揮を執っているアンドレイ・トロシェフ氏との関係がいろいろと取りざたされています。というのも、トロシェフ氏はワグネル反乱時にFSBへ情報提供した疑いがもたれており、退役軍人の多くは彼を裏切り者だと考えているのだとか。それが事実なら、パベル氏にとってトロシェフ氏は、いわば親の仇も同然。ましてや、パベル氏が今回のプーチン発言で怒り狂った幹部たちを先導すれば、再び反乱というシナリオもないとは言えない。プーチン氏はトロシェフ氏をうまく利用してワグネルを国防省傘下に引き入れる腹積もりでしょうが、はたして思惑通りに事が運ぶかどうか。今後のプーチンVSワグネルの成り行きが気になります」(同)

“プリゴジン氏の亡霊”は、今後もしばらく両者を悩ませそうだ。

(灯倫太郎)

ライフ