沖縄の無人島に今、暗い影が差し始めている。「島を買った」と発信した中国人女性の目的は観光ビジネスとされていたが、どうやらそうでもないようなのだ。
「調べてみると、由々しき事実が確認された」
公安関係者がそう漏らしたのは2月末のこと。ちょうど、中国人女性のSNSでの発言から1カ月ほど経っていた。
今年1月末、沖縄本島北部に浮かぶ屋那覇島(沖縄県島尻郡伊是那村)に上陸した中国人女性Aが、中国製SNS「TikTok」に動画をアップし、その中でこんなことを口にしたのである。
「後ろに見える70万平方メートルの島は、私が20年に購入しました」
これが日中両国で大いに関心を集めた。中国では羨望と同時に、「中国の領土だ」「軍事基地にしよう」などといった声が上がった。
一方、日本では「国防上、問題なのではないか」との懸念が湧き上がった。この島を実際に購入したのが、Aの夫であるBという人物が経営している中国系企業であったからだ。Aは同社取締役で、主な業務は中国ビジネスコンサルティングや不動産投資、リゾート開発である。屋那覇島についても、同社ホームページで購入したことを明らかにし、「リゾート開発計画を進めている」と記している。
だが、実際に同社が購入したのは、島のおよそ半分の面積にすぎないことが判明。さらに、多くの村民は屋那覇島のリゾート開発を知らされておらず、購入から2年以上経っても、開発の具体的な動きがないなど、多くの不可解な点が残されていた。
そんな中、飛び出したのが、冒頭の公安関係者の発言だった。同関係者は、こう続けた。
「Bの周辺を洗うと、単に観光ビジネス目的とは言えないことを指し示す人間関係が確認された。中国の女性エージェントとコンタクトがあることが通信記録などから明らかになった」
そもそも、Bは中国に居住していたこともあり、そこで事業を展開している人物でもあるという。「中国本土でビジネスをする以上、政府とのかかわりがないはずがない」と公安関係者は見ており、当局にエージェントとして登録されている中国人女性との日本におけるコンタクトも、その傍証の一つだというのである。
さらに、公安関係者が警戒感を募らせる疑惑も露呈している。
「Bの周辺には、米国が工作員養成機関として強く警戒する在京の日本語学校に関与している日本人男性がいることも確認されている」
時任兼作(ジャーナリスト)
(つづく」)