J3高知・秋田豊監督「パワハラ疑惑」に日本代表・森保一監督が言及「一番の不幸は…」

 J3リーグ・高知ユナイテッドSCは6月29日、秋田豊監督に対するパワーハラスメント疑惑を公表し、当面のあいだ監督を休養扱いとすることを発表した。クラブによると、選手およびスタッフから申し立てがあったことが事態の発端であるという。

 秋田氏は、1998年・2002年FIFAワールドカップに連続出場した元日本代表DFであり、鹿島アントラーズ時代にはジーコ氏の薫陶を受けた名選手として知られていた。現役引退後は京都サンガ、FC町田ゼルビアなどで監督を務め、2022年にはJ3・いわてグルージャ盛岡の社長にも就任。多彩な経歴を持つ人物である。

 24年シーズンからJ3に新規参入した高知は、実績豊富な秋田氏に白羽の矢を立て、チーム強化の要として招聘した経緯がある。実際、開幕からは順調な成績を挙げ、20クラブ中8位と健闘していた。

 しかし、クラブ関係者や取材記者の間では「秋田監督の指導法は以前から荒っぽいと囁かれていた」という声もあり、今回の騒動は“時間の問題だった”との見方も出ている。

 クラブは7月2日に緊急会見を実施し、現時点での状況と対応方針を説明する予定だ。また、事実関係の究明については、外部の第三者委員会に調査を委ねる方針を明らかにしている。

 一方、秋田監督本人は「これまで指導に際し、ハラスメントを意識して行ってきたことはありません」とコメントを発表しており、意図的な行為ではなかったことを強調している。

 またこの問題に対しては、日本代表・森保一監督も異例の提言を行っている。Jリーグの視察後、「今はどちらかというと、声を上げた側が被害者になって(指導者が)加害者になるという、指摘した側のことが取り上げられることが多い」「本当にそうかどうかというのは分からない事例もある」と語り、指導とハラスメントの境界線に関する難しさを指摘。さらに「何よりも子供・選手が成長するために的確な指摘ができなくなるのが一番の不幸だと思う」としている。

 少子化の進行により、スポーツ界は子供たちの取り合いの様相を呈しており、パワハラ体質が根付く競技は保護者から敬遠される傾向にある。このため、サッカー界でもパワハラ問題に対して極めて慎重な姿勢が求められている。

 今後、第三者委員会による調査結果次第では、秋田監督の今後のキャリアにも重大な影響を与える可能性がある。Jリーグ、そして日本サッカー界全体にとっても、極めて注目される事案だ。

(小田龍司)

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