中国につくか、台湾につくか……。中国VS台湾の緊張関係が続く中、遠く海を隔てた太平洋の島しょ国や中米の途上国でも今、その資金援助を巡り熾烈な「乗り換え合戦」が勃発しているようだ。
中米ホンジュラスのシオマラ・カストロ大統領が、これまで外交関係を築いてきた台湾との関係を切り、中国と正式な外交関係樹立を実現させるよう外相に指示したと、自らのツイッターで明らかにしたのは今月14日のことだ。
台湾とホンジュラスは1941年に国交を樹立、以降友好関係を続けてきたが、
「カストロ氏は2021年11月の大統領選の際、台湾と断交し中国と国交を結ぶことを公約に掲げ当選した人物。とはいえ、さすがにすぐには国交断絶には踏み切れず、就任後もこれまで通り、台湾との関係を維持する意向を示していました。ところが、同国の深刻な財政難と膨らんだ負債により、台湾に対し年間5000万ドル(約67億円)の援助倍増と、6億ドル(約800億円)の債務の『再調整』を求めたのですが、台湾側から前向きな回答を得られなかった。ホンジュラスは人口約1000万人の70%以上が貧困状態とされる中南米の中でも最貧困国の一つで、国が抱える債務は200億ドル(2兆6700億円)に上ります。その返済額だけでも昨年は22億ドル(約2940億円)、今年も23億ドル(約3080億円)となる見込みで、もはや国内経済はニッチモサッチもいかないような状態でした。そこで、頼みの綱だった台湾から袖にされたことで、背に腹は代えられないと中国に乗り換えたというのが実情のようです」(全国紙記者)
突然の絶縁宣言に、台湾外交部(外務省)は15日、「中国の罠にはまり、台湾との長年の友好関係を損なう誤った決定をしないよう慎重に考慮してほしい」との声明を発表したが、時すでに遅し。一方、中国外務省は「世界の181の国が中国と国交を結んでいる。中国との国交樹立は正しい選択だ」と歓迎している。
ところが逆に、中国への不満から、中国に代わって台湾と国交を結び、資金的援助を受けたいとの意向を示している国もある。それが、太平洋の島国であるミクロネシア連邦だ。
「ミクロネシアをはじめ太平洋の島しょ国は軍事戦略上、米軍基地があるグアム島と米国の同盟国オーストラリアと繋ぐ重要なエリアですが、近年中国はそれら島しょ国に対し、政府高官を次々に派遣。猛烈な勢いでインフラ施設を建設して、存在感を誇示してきました。そんな中、同国のパニュエロ大統領は、太平洋の島しょ国10カ国との安全保障・貿易協定を締結しようとする中国に対し批判を展開。自国の政治家に『賄賂、心理戦争や恐喝』をかけてきたとまで指弾しています。パニュエロ氏は今期で退任が決まっていますが、ロイターなどの報道によれば、2月に台湾の外交部長(外相)と会い、5000万ドルの援助を条件に中国から台湾への外交シフトについて協議をしたとのこと。これが事実なら、こちらは中国から台湾へ乗り換えることになります。このように貧困国や途上国をめぐっては、今後も資金援助をカードに両国間で引き抜き合戦が続くでしょう」(同)
昨日の敵は今日の友、になりうるというわけか。
(灯倫太郎)