「議員辞職しろ!」「全くの捏造だ!」国会に投下された内部文書が焼夷弾のごとく燃え広がっている。たかが紙切れ1枚と笑うなかれ、時には大臣のクビも吹っ飛ばす最終兵器へと大化けするのだ。議事堂をガタガタ揺るがした最強「紙爆弾」事件を総まくりする。
まさに寝ている子を起こす大騒ぎだ。きっかけとなったのは、総務省の赤字で厳重取扱注意と記されたA4用紙78枚の「内部文書」だった。
3月3日、参院予算委員会で、立憲民主党・小西洋之参院議員(51)が放送法の「政治的公平」に関し、第2次安倍政権時に官邸側の「圧力」があったとして公表したのだ。
その中身は、14年から翌15年にかけての官邸と総務省のやり取りが記録されており、中でも総務省に乗り込んだ当時の礒崎陽輔総理補佐官(65)が、もはや総理の名代のごとき剣幕で官僚にまくし立てる様子が浮き彫りになっていた。
「サンデーモーニングには問題意識を持っている」
「(報道ステーションの)古舘も気に入らない」
「けしからん番組は取り締まる」
「この件は俺と総理が二人で決める話」
安倍政権にモノ申すテレビ番組は断固許すまじ、という猛々しい肉声が克明に記されているのである。
これに続けと、当時総務相を拝命した高市早苗経済安保担当相(62)も、
「そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある?どの番組も『極端』な印象」
などと自論を開帳してみせた。
ところが、この日の国会質疑で追及を受けた高市氏は、
「全くの捏造だ」
と、文書を真っ向から否定。すかさず、小西議員から、
「捏造でなければ議員辞職だ」
と、追い打ちを掛けられると、
「結構ですよ」
と、喧嘩上等と堂々タイマン火花を散らせたのだ。
当初、与党側は「文書の正確性に疑義がある」と反発し、国会での配布を認めなかったものの、4日後には松本剛明総務相(63)が「作成の経緯が判明しないものがある」としながらも、すべてが行政文書であることを認めている。
しかし、依然として高市氏だけが、
「(自身の発言がある)文書4枚は捏造だ」
と、一歩も引かず反論を展開している。果たしてその真偽とは─。
官邸番記者が高市氏の真意を代弁する。
「この『高市大臣レク結果』という文書には配布先が明記されているが、そこに高市氏側の人間が入っていない。つまり、当時の高市氏は大臣でありながら総務省の蚊帳の外、自分の発言が記された内部文書を官僚に見せてもらえていなかったわけです。当時、NHK改革などを断行する高市氏への総務官僚のアレルギーは強く、後に『かんぽ生命保険の不正販売問題』で情報漏洩をした事務次官を更迭したことで、その不仲は決定的なものとなりました。今回の紙爆弾は高市氏に恨みを募らせた総務省内の旧郵政省グループの意趣返しだと言われています」
文書こそ否定した高市氏だが、この文書直後の15年5月の国会答弁では「1つの番組でも、極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」とするこの文書の中身そのままを履行するような新たな解釈に踏み込んでいるのだ。
「文書をよく読み込むと、当初『本当にやるの?』(3月6日)と懐疑的だった高市氏が、3日後の安倍総理との電話会議でひっくり返っていることがわかります。電話の内容をどうやって第三者が伺い知ったかは不明ですが、官僚が文書改ざんの罪を犯す、ましてや全部を捏造したという主張には無理がある。むしろ、売り言葉を真に受けてしまった高市氏の発言の方が問題で、与党内からも『記憶にない』など逃げ道を作っておけばよかったという声が漏れています」(官邸番記者)
政界の後ろ盾であった安倍元総理の遺志を引き継ぐことを公言する高市氏だが、森友学園問題で疑惑を詰め寄られ「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と啖呵を切った故人を踏襲するかのように、むざむざ墓穴を掘ってしまうのだろうか‥‥。
(つづく)