引き分けでもグループリーグを最終突破できるケースには、実は2つのパターンが存在する。引き分けの勝ち点1でスペインを上回り2位に滑り込む場合と、引き分ければ日本とスペインの1位、2位が確定する場合だ。
「当然ながら、後者のほうが理想的な展開です。スペインも決勝トーナメントを見越してメンバーをローテーションしてくるため、圧倒的に戦いやすくなるからです。ただ、日本とスペインが両者とも難敵ドイツの上に立っている必要があるのですが‥‥」(サッカージャーナリスト・六川亨氏)
元浦和レッズ選手でスポーツキャスターの水内猛氏はこうも言う。
「その場合も、後半途中で0─0というような状況を作る必要があります。最初から引き分け狙いのプレーでしのぎ切るのは至難の業。少なくともゲームの入りはいつも通りがいいでしょう」
両チームに「このまま引き分けで終わらせよう」という暗黙の了解が働くことは、ワールドカップの歴史において少なからず存在した。そうなれば僥倖だが、もう1つの「必死で攻めるスペインに得点させず引き分けに持ち込む」という状況になった場合は、日本サッカーにとって「最も長い90分」となるだろう。
「ボランチを1枚代えて板倉滉(25)を置いて、常に5バック気味に戦う、というのも選択肢の1つだと思います」(六川氏)
そういう意味では、完全な引き分け狙いこそ、森保一監督(54)の対応力が試されるケースかもしれない。最後に水内氏が、日本にとって最も危険な相手FWを名指しする。
「スペインの前線では、バルセロナの下部組織で久保とチームメイトだったアンス・ファティ(20)が特に怖いと思います。一瞬のキレのあるスピードと得点感覚は抜群。自分もJリーグで経験しましたが、若手選手が大舞台で1点取れれば、それをきっかけに一気に成長することがある。そこには気をつけてほしい。スペインのような誰もが認める強国との対戦は、それ自体がいち観客として楽しみで仕方ありませんが、ぜひ決勝トーナメント進出を掴み取ってほしいですね」
森保JAPANにとって、4年間の集大成となるスペイン戦から目が離せない。
*週刊アサヒ芸能12月1日号掲載