まさに天国と地獄を味わった。
初戦でドイツから歴史的な大金星を奪った日本代表だったが、2戦目は格下のコスタリカ相手に0-1で惜敗。決勝トーナメント進出は最終戦のスペイン戦に持ち込まれた。
注目されたのは初戦でスペインに0-7と大敗したコスタリカが、もう負けられないと攻めてくるのか。それとも格上の日本相手に守ってカウンターを仕掛けてくるのか。
森保監督が送り出した先発11人は中途半端だった。右サイドバックに故障の酒井宏樹に代えて山根視来は当然だが、ワントップに前田大然ではなく高さと体が強い上田綺世を起用したのは、コスタリカが引いて守りを固めると予想したからだろう。ところがボランチには攻撃的な田中碧ではなく守備的な守田英正を入れ、2列目の右にもパスで崩すタイプの堂安律を置き、左にもドリブルで仕掛けられるが献身的な守備が売りの相馬勇紀を入れた。引いた相手を崩すには、個の力で仕掛ける選手が必要で、三笘薫や久保建英を先発で使うべきだった。
コスタリカに勝って決勝トーナメント進出を決めたい日本だったが、中途半端な先発の影響なのか前半は全くいいところなく終わった。
日本が主導権を握っているように見えたが、前半のボール支配率はコスタリカの53%に対し日本は37%。シュート数もコスタリカ3本に対し日本はわずか2本だった。
なぜ日本が主導権を握っているように見えたのか、それは相手が横パスとバックパスでボールを回しているだけで攻めてこなかったからだ。にもかかわらず、日本もそれにお付き合いして、ダブルボランチの遠藤航、守田は後ろで守っているだけで、前線の上田は完全に孤立した。
何のために上田を先発させたのか。相手が攻めてこないとわかったのであれば、ラインを押し上げて、完全に押し込んで前半で試合を決めるぐらいの戦いをするべきだった。
後半に入って上田に代えて浅野拓磨、長友佑都に代えて伊藤洋輝を入れた。3バックにしたが、5バックで守るコスタリカにはさほど有効ではなかった。ボランチの2人も前半とは違い高い位置にポジションを上げシュートを狙うが、決定機は作れない。
その後、切り札の三笘、伊東純也、南野拓実と次から次に攻撃的な選手を投入するが、コスタリカがワンチャンスを活かし、1-0で逃げ切った。
後半にチャンスは何度か作れたが、決定機はゼロだった。大会前、勝たなければいけない相手と言われたコスタリカにまさかの敗退。
まさに天国と地獄を味わった。それでもまだ決勝トーナメントの可能性は残っている。10日間で2度の奇跡が起こるとは思わないが、今大会は番狂わせが何度も起こっている。何かが起こる可能性は十分ある。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。