“リーゼント刑事”秋山博康「悪さをしたヤツは目に表れる」/ガタガタ言わせろ!(1)

 おはようさん! リーゼント刑事こと秋山博康です。今回は唐突かもしれないが、法律違反の薬物依存症、いわゆる〝ポン中〟の見分け方についてガタガタ言わせていただきたい。

 ワシは高校を卒業後の1979年、徳島県警察に採用された。その後、交番勤務と機動捜査隊を経て31年間、刑事畑を歩んできた。

 機動捜査隊時代は、ポン中を逮捕するのも業務の1つでね。「ポン中を逮捕する名人」と呼ばれていた先輩といつも行動を共にしていたおかげで、自分なりの発見方法を見つけた。100人以上、逮捕できたのは、ヤツらに共通点があるからだ。主な特徴の、以下3点を紹介しよう。

【1】車を〝シャブ止め〟する。

〝シャブ止め〟は、ワシの造語。クスリがキマッていると横着になるのか、車線内に停車できない。必ずと言っていいほど、驚くほど斜めに止めている。ワシも現役時代、たくさん出演した「警察24時」(テレビ東京系)を観たことがある人なら、記憶がよみがえる方もいるだろう。コンビニなんかで、ビックリするほど斜めに止めてあるような車両だ。

〝シャブ止め〟した車は、大半が長期間洗車されておらず、バンパーなどにも細かなすり傷がある。車内も乱雑で整理されていない。ポン中だと、身の回りまで気遣えない現実が逮捕のきっかけとなる。ワシにとって即、職質の対象だった。

【2】携帯電話で話をする時に、ワキを締められない。

 皆さん、外出時に携帯電話に着信があって、電話に出た時の自分の姿を想像してみてください。普通、ワキを締めて、電話を耳に近づけて応じていませんか?

 これが、ポン中は脇を締められないんですよ。一般的に興奮剤だから、気分がアガりすぎているのかもしれない。腕を90度か、それ以上に上げて話す。普通なら腕が疲れてしまう角度を、延々と続けている。そういった細かい着眼点を、警察官は自分で発見せないかんわけです。

【3】ポン中は警察車両に出会うと、「逃げたい目(逃走したい目つき)」をする!

 現役時代から犯罪ジャーナリストになった今も、よく質問される。

「悪いことをしていないのに、警察車両が近づいてくると胸がドキドキして怖くなってしまいます。ポン中など、悪いことをしている人間と、していない人の見分け方はあるのでしょうか?」

 答えは簡単。ポン中やスピード違反など、悪さをしているヤツは「逃げたい目」をする。一刻も早く警察官から離れたいから、当然だ。

 一方で、悪さをしていない人は「怯える目」をしているもの。車を運転している時に警察車両が前や後ろを走っていて、「取り締まられないように、スピードを落とさなければ」と思ってる時の目が代表格だ。

「目は口ほどに物を言う」ということわざは真実で、前科が何犯あろうと、警察車両を見つけると「逃走しよう」と考えるものなんです。自分が犯罪者だと自覚しているし、刑務所に入って自由を奪われたくないから。車の運転中であれば、少しワシらから目をそらすこともあるし、スピードを上げるとか緩める。あるいはコース変更などをして、必死に逃げようとする。

「逃走の目つき」か、「怯える目つき」かは、経験とセンスでしか磨かれない。異変を一瞬で見抜くのが、警察の仕事。仕事の経験は同じ職業を続けていれば誰もが積めるだろうが、センスが悪いヤツは何年経っても使い物にならない。この点は、どの職業でも同じではないだろうか。

 またテレビ番組の話になるけれど、犯罪に手を染めているのに警察に職質される人間が、こんなコメントを耳にしたことがないだろうか。「自分の体に触るな」とか、「弁護士が来るまで何も話したくない」とか。

 容疑者はガタガタ文句をたれるから、ワシらも説得するのに難儀した事件が何件もある。「自分で罪を白状しなさい!」とゲロさせた薬物事件は枚挙にいとまがない。違法薬物乱用防止のキャッチコピー「ダメ。ゼッタイ。」は正義で、絶対に手を出してはいけないからこそ、あえて声を出して伝えておきたい。

秋山博康(あきやま・ひろやす)タレント。1960年7月8日生まれ、徳島県出身。通称「リーゼント刑事」。元・徳島県警捜査一課刑事。現役時代、「警察24時」などのテレビ番組に出演し人気に。現在は犯罪コメンテーターとして活躍。

ライフ