第2戦コスタリカ戦の成績次第ではあるものの、前回大会のポーランド戦のように、負けても日本のグループリーグ突破が決定するというケースは、現時点では想定しないほうがよい。なのでここでは、日本の勝ち抜け条件として「スペインに勝利」「スペインに複数点差で勝利」「引き分け」の3つのケースで考察を加えてみる。
まずは、スペインに勝利すればグループリーグ2位以上が確定する場合。特別な条件はなく、この場合はベストメンバーを充てることが濃厚だ。
サッカージャーナリストの六川亨氏分析する。
「頻繁なパス交換で試合を作るスペインは、途中でパスカットされて攻守が入れ替わるのが一番イヤ。ですから日本としては、前線から積極的にプレスをかけ、チームトップの快足を誇るFWの前田大然(25)や右ウイングの伊東純也(29)がショートカウンターを狙う展開になるでしょう。基本的には耐える時間帯が多くなりますが、そこは我慢し続けるしかない」
東京五輪でもそうだったが、日本はボールを保持し続けるスペインに対し、受け身になる可能性が高い。「ボールの奪いどころは非常に重要」と六川氏に同意するのは、元浦和レッズ選手でスポーツキャスターの水内猛氏だ。
「ロングボールを最前線で収められる大迫勇也(32)がメンバーから漏れたということは、大迫がタメを作ってそこに2列目から選手が飛び出していく攻撃を想定していないのではないかと思われます。やはり基本線は9月の親善試合のアメリカ戦のように、前田を中心とした攻撃的な守備がカギになると思います」
ただし、前線からのハイプレスが大前提だとしても、それ一辺倒の姿勢は危険が伴う。
「ボールを持つ選手全員に対して毎回プレッシャーをかけるのは、こちらが疲弊していくだけです。センターバックに預けた時は深く追わずにGK(ゴールキーパー)に戻したら必ずプレスする、というふうに、チームとしての決まりごとを作る必要はあるでしょう」(水内氏)
また六川氏が、守備時における注意事項を解説する。
「要注意は、中盤の底から全体にボールを供給する役割のセルヒオ・ブスケツ(34)。彼がボールを持った時に、危険な縦パスを出させないこと。最低限、体を寄せて縦のパスコースは切りたいです。それと、全体的な守備でリスクを冒さないことが最重要だと思います」
ディフェンスラインからボールを回して崩すことに固執していては危険。危なければ単純に大きく前線に蹴りだしたり、スローインに逃げることも大事、というわけだ。
「いずれにせよ、少ないチャンスをモノにすることが絶対条件であることには変わりません。個人的にはスペインで結果を残している久保建英(21)に期待したい。やれる実感を持っているでしょうし、サプライズゴールを見てみたいですね」(六川氏)
ニッポンの美徳である「我慢」を繰り返した果てにのみ、歓喜のゴールが待ち受けているのだ。
*週刊アサヒ芸能12月1日号掲載