現在、賛否両論が噴出している安倍晋三元首相の国葬をめぐる問題。自民党の茂木敏充幹事長が、「国葬は極めてふさわしい、適切なあり方だ」として、野党を中心に反対論が出ていることに対して、「国民の認識とはかなりずれているのではないか」との発言が炎上している。誰が見ても茂木氏は保守層に対して風見鶏的な発言をしているのは明らかなので、反対派の批判に油を注ぐズレっぷりなのだが、まあそれはそれとして。
結局みんながどう考えているのかは知りたいところ。いの一番に「熊本日日新聞」がアンケートを行ったという。さて、その結果は。
賛成が30.1%で、反対が33.5%だったという。「どちらかと言えば」の意見も合わせると、賛成派は42.9%で、反対派は49.6%。「どちらともいえない」が7.5%だった。
トータルで見れば「反対」多数ということだが、年齢別に見ると風景が変わる。最も賛否が分かれたのが、20歳以下と60代だ。20歳以下だと「どちらかというと」を含めた賛成派が59.4%、反対派が36.5%だったのに対し、60代は賛成派31.6%、反対派60.4%と、若い世代は賛成、年配は反対の傾向が見て取れる。
この結果に対して、SNSでは「反対が半数いる時点でダメだろ」という意見や、「若い世代は物心ついた時からアベ時代だったからね」といった声が。確かに年配者ならかつての反権力といった時代の残り香もあれば、比較対象もあった。ところが若い世代はそういったものがない。ムードで流されがちとも言える。
では選挙での投票行動で政治に参加している人限定で考えてみれば、これは数字を出すまでもなく年配の人の方が投票に行っているので、投票者のかなりの部分は「反対」ということになる。
「ましてや熊本はかつては衆院の1区で民主党の松野頼久といった重鎮もいましたが、4選挙区はこのところずっと自民党が議席を占めています。参院も熊本選挙区はほとんどが自民で、この前の参院選でも松村祥史さんが次点の立民候補の得票約20%に対し60%超の圧倒的勝利を納めています。自民王国とは言わないまでも、地方だけにかなり保守的な政治風土と言えるでしょう」(全国紙記者)
それでもトータルでは「反対」が勝っているというのだから、これが大都市圏ともなればやはり反対色は強まるわけで。やはり茂木発言のズレ度が数字として表れたことになる。
(猫間滋)