先月21日、ウクライナ南東部の要衝マリウポリの「アゾフスターリ製鉄所」への「攻撃中止」を命じたプーチン大統領。民間人の救出はおこなわれているものの、5月に入った今もなお、連日の空爆が続いている。
ロシア軍が苦戦を強いられているのは、ウクライナ軍による想定外の反撃に他ならないが、大きな功績を担ったのが、欧米から支援された大量の軍事兵器だったことは言うまでもないだろう。
「なかでもバイデン米政権は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、米軍が保持していた約23億ドル相当の兵器をウクライナへ供与。また、同国への軍事支援計画の一環として軍事企業から購入した3億ドル相当の兵器も提供しています。その内訳は、①携行式地対空ミサイル『スティンガー』約2000発、②『ジャベリン』約7000発を含む対戦車ミサイル1万2000発以上、③自爆攻撃機能を持つ無人航空機「スイッチブレード」数百機 ④小火器7000丁以上 ⑤弾薬5000万発以上 ⑥レーザー誘導式ロケットシステムなど。さらに、先月21日の会談でバイデン政権は155榴弾砲72門と砲弾14万4000発、戦術無人機などを含め、ウクライナに対し8億ドルの追加軍事支援を行うと発表。『同盟国などと協力して必要な兵器を特定し、支援し続ける』と表明しているため、今後さらなる追加支援は必至です。そうした状況から、兵器の在庫状況に対し米軍関係者の間では懸念の声が上がっているのです」(軍事ジャーナリスト)
なかでも国内在庫の枯渇が不安視されているのが、ロシア軍による「侵攻阻止の象徴」とされた対戦車ミサイルの「ジャベリン」。先述のように米国はすでにこの兵器を7000発以上もウクライナに引き渡しているとされ、この数はすでに米国の在庫数の3分の1に相当するという。
「ジャベリンは、歩兵の持ち運びが可能な携行型の対戦車ミサイルで、2500メートル離れた地点から戦車を撃破できるため、今回のウクライナ防衛でもっとも高い成果を挙げている兵器です。しかし、米シンクタンク『戦略国際問題研究所』の試算によれば、生産された累計3万8000発のうち毎年の演習で消費したものなどを差し引くと、ウクライナ提供前時点での在庫はおよそ2万から2万5000発。そこから提供された7000発を引くと、在庫は3分の2前後。これ以上減ってしまえば、アメリカは自国の兵器備蓄計画に影響を及ぼす可能性があります」(同)
ちなみに、ジャベリンは1発あたり19万2772ドル(約2500万円)。これら軍事兵器には半導体やレアアースなどが使用されているため、今回の戦争で供給網が制限され、生産が遅れる要因となっているというから、なんとも皮肉な話だ。
(灯倫太郎)