今、韓国国内で最大の注目を浴びるある事件が、いよいよ佳境に入ってきた。
「韓国渓谷殺人」と名付けられたこの事件の主役とされるのは、イ・ウンヘ容疑者(31)と、交際相手の男チョ・ヒョンス容疑者(30)。2人は、2019年6月、京畿道加平の渓谷で、イ容疑者の夫Aさん(死亡当時39)に飛び込みを強要。救助を求める夫を放置して死亡させたとして殺人、殺人未遂、保険詐欺防止法違反の疑いで逮捕され、19日勾留された。
「死亡した夫には8億ウォン(約8330万円)の生命保険が掛けられており、検察はイ容疑者が男と共謀、夫を殺害したとして2人を呼び事情を聞いていたのですが、2回目の取り調べ直前に2人は逃走。全国に指名手配したものの行方が分からず、ようやく4カ月後の今月16日、京畿道高陽市の三松駅近くのオフィステルで身柄が確保されました。しかも逃走中、2人は整形外科を訪ね、整形手術の見積もりを取っていたことも判明。事件の背景もさることながら、そのサイコパスっぷりと、ゆがんだ性格を形成した過去に、世間の関心が集まっているんです」(韓国在住のライター)
特に主犯とされるイ容疑者の過去は壮絶だ。韓国メディア「チャンネルA」によれば、イ容疑者は、中学3年生だった15歳の時に体を売って警察に摘発され、その後、窃盗や詐欺などで少なくとも9回立件されているというのだ。
「イ容疑者が“援助相手”から、16万ウォン(約1万6000円)を受け取り、初めて青少年性保護法違反の疑いで立件されたのは2006年7月のこと。その後は、財布を盗むなど窃盗目的で“援助活動”を続け、2009年までに5回逮捕され、少年審判にかけられています。また、妊娠中の2010年には、ナイトクラブで他の客にけんかを売り、暴行の疑いで警察の取り調べを受け、さらには2017年から2019年の間には、亡くなった夫に関する保険詐欺以外に4件の保険詐欺の疑いで書類送検されているというんですから、まさに犯罪常習者。当局の専門家らも『彼女は反社会的性向を持ちながら、対人関係では他人をコントロールする能力がずば抜けて優れる典型的なサイコパスである』と分析しているようです。逮捕された内縁の男も彼女に精神的に支配されていた可能性もあり、検察では慎重な取り調べが続いているとのこと」(同)
2人が逃走中にメディアで公開された、死亡したAさんが水遊びをする映像には、チョ容疑者が共犯者とともにAさんの乗った浮き輪を引っ張り、渓谷の奥の方へ運ぶ様子が確認できる。そこには、水が苦手で「もうやめよう」と訴えるAさんに対し、2人は「何を言っているんだ」とさらに激しく浮き輪を揺らし、「僕が悪かった。謝るからもうやめよう」と何度も訴えるAさんを見て大笑いするイ容疑者や知人らの声も入っていた。
被害者男性はこの後、午後8時20分ごろに崖から水面に飛び込み、溺れて死亡したとみられている。遺族の無念を晴らすためにも一日も早い全容解明を願うばかりだ。
(灯倫太郎)
*写真はイメージです