民法の改正で成年年齢が18歳に引き下げられた。「新成人」になれば公認会計士や医師免許といった国家資格が取得可能。その一方で、親の同意がなくても各種の契約が交わせることから、世間知らずの18歳を食い物にする悪徳業者が横行。水面下で爆増中の「新成人ビジネス」の被害実態を追う。
「まさか高校生から仮想通貨の取り引きを持ちかけられるなんて夢にも思いませんでした。それがクラス全体に広がっていたというんですから。近々行われる保護者会に弁護士先生も来るそうですが、騙し取られたお金は返ってこないでしょう」
高校3年生の息子を持つ主婦のAさんは驚きを隠せない。事の発端は、4月に18歳の誕生日を迎えたクラスメイト・B君に届いた1通のメールだった。
〈御成人おめでとうございます〉
こんな祝福のメッセージとともに勧められたのは、日本で生まれたという仮想通貨「X」。以前から関心を持っていたB君は「第2のビットコイン」「今年末に暗号資産取引所に上場」との謳い文句を真に受けてXコインを20万円分購入。そればかりか、紹介プログラムの報酬に釣られてクラスの友人に広めてしまう。
「B君が最初に勧めた子は10万円分の暗号資産を購入し、B君の電子マネーには2万円分のポイントが入金されたと聞いています。『X』が取引所に上場すれば高騰するうえに、友人が購入した分の10%が報酬として永久に支払われるとのことで、うちの息子もつい飛びついてしまい‥‥。担任の先生が気づいた時には10名以上が購入して、その総額は100万円以上に上っていました」(Aさん)
だが、紹介報酬が支払われたのは最初だけで、返金はおろか、「上場前」という理由で別の仮想通貨に換金することもできない。
「メールの発信元にあった団体は存在せず、明らかに詐欺ですよ。でもいちばん怖いのは個人情報の漏洩。詐欺グループはなぜB君の誕生日とメールアドレスを知っていたのか。学校関係者からの漏洩を疑う声もあります」(Aさん)
高3クラスが仮想通貨でパニックに陥ったのは、今年4月から成年年齢が引き下げられた影響が大きい。保護者の同意がなくても、クレジットカードの作成ができるようになった。
悪徳ビジネスに詳しい社会部記者によれば、
「通貨の取り引きに使う口座も18歳から開設できるようになり、これまで小遣いでスマホゲームに課金していたような高校生がターゲットになるのは明白。金融庁に登録した業者が大半ですが、無登録サイトも多いので〝詐欺コイン〟をつかまされないよう注意が必要です」
18歳の子を持つ親は気が気でないだろう。
*「週刊アサヒ芸能」4月28日号より。【2】につづく