「しばらく立ち止まるが、過去2年半、国民と共に歩んできた未来への旅は立ち止まってはいけない。私は決して諦めない」
12月14日、自身の弾劾訴追案が可決されたことを受け、こう談話を発表した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。しかし復帰の意欲とは裏腹に、今後は内乱罪の疑いによる捜査が始まることで、いばらの道が続くことは想像に難くない。
尹氏は12日の談話でも、「最後まで闘う」と、改めて非常戒厳の正当性を強調している。その中では、北朝鮮が中央選挙管理委員会にサイバー攻撃をかけ、選挙結果が歪曲された可能性がある、などと主張。しかし韓国メディアによれば、この情報源は右派系YouTuberらが無責任に言い放ってきた陰謀論で、同氏がその話を信じ込み3日の「非常戒厳」が勃発した可能性が
「韓国には、発言があまりにも危険だったり偏り過ぎることで地上波に出られないような政治評論家らが、ごまんといる。そんな彼らがかねてからYouTubeを活用して独自のチャンネルを開設し持論を展開しているのですが、中にはチャンネル登録者数100万人を超えるような人気ユーチューバーもいて、彼らの発言の影響を受けている政治家は少なくないと言われています」
実は、その代表的な政治家が、なんと尹大統領だったというのである。尹氏がスマホ愛好者であることはかねてからよく知られる話だが、関係者によれば尹氏は情報収集にあたり、地上波の放送よりスマホやYouTubeに頼り切っていたとの証言もあるというから驚く。
「ねじれ国会の影響もあり法案がまったく通らない中、ストレスがどんどん溜まっていく。しかし部下たちは尹氏から叱咤されることを恐れ、誰一人助言する者はいない。そんな状況の中、尹氏の心のより所は自分を支持してくれるユーチューバーや、彼らが主張するような情報ソースが不明な陰謀論的ニュースが主になってしまった。結果、繰り返し極右系のYouTubeチャンネルを連日視聴するようになり、傾倒していったとみられています」(同)
しかも尹氏が、ある意味「海千山千」の政治家だったらまだよかったものの、検察オンリーの道を歩んできた「超堅物」とあって、一度思いこんだら突っ走るという性格も手伝い今回の「想定外」の行動に出たという見方が濃厚になっている。
さらに、この「超堅物」大統領に多大な影響を与えていたのが、妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏を取り巻く怪しい輩の存在だというのである。
「『美しすぎるファーストレディ』とも呼ばれる夫人に関しては、大統領就任当初から数々の疑惑が囁かれ、野党にとっては大統領攻撃の格好のターゲットにもなってきました。そんな彼女のブレーンには、チョンゴン氏という著名霊媒師(シャーマン)がいて、彼が金夫人を介して尹氏の意思決定に大きな影響を及ぼしていた可能性も指摘されています」(同)
尹氏は大統領就任の朝、ソウルの青瓦台にあった大統領執務室を南方の龍山ある国防部庁舎に移転したそうなのだが、実は、この移転をアドバイスしたのもチョンゴン氏だったそう。韓国メディアでは大統領執務室を霊媒師の指示で移転したなど前代未聞だ、と報じている。
ともあれ、内乱罪に問われれば最悪、極刑という末路もある尹大統領。その前途は、あまりにも多難と言えるだろう。
(灯倫太郎)