藤井聡太五冠VS全盛期の羽生善治七冠「最強はどっちだ」【1】公式戦では藤井の5勝1敗

 史上最年少の五冠棋士の誕生は、将棋界のみならず、日本中を祝福ムードに包み込んだ。八冠への道筋も見え、「史上最強」との呼び声も高いが、ちょっと待ってほしい。90年代に一大フィーバーを巻き起こした永世七冠をお忘れか。全盛期の羽生善治と藤井聡太、世代を超えたドリームマッチをお届けしよう。

 2月12日、8大タイトルのひとつ・王将戦で3度目の防衛を目指す渡辺明三冠を4連勝で下し、「藤井聡太五冠」が誕生した。19歳6カ月での五冠達成は、羽生善治九段が保持していたこれまでの最年少記録(22歳10カ月)を大幅に塗り替える快挙となり、またひとつ将棋界に金字塔を打ち立てた。

 過去に五冠を達成した棋士は3人。大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、そして羽生善治九段である。藤井五冠は記者会見でこの先人たちと肩を並べたことについて、

「本当に時代を築いた偉大な棋士ばかりなので光栄に思います。自分の場合はまだまだ立場に見合った実力が足りないかなと思うので、今後さらに実力をつけていく必要があるかなと思います」

 とコメントしている。

 ただ「本当にそうなの? それって謙遜で、実際には史上最強なんじゃないの?」と考えるファンは多いのではないか。それほど現在の藤井五冠の強さは圧倒的なのだ。

■10代から20代前半までが最も伸びる時期

 そこで今回、将棋界で唯一の「永世七冠」の称号を持ち、タイトル獲得合計歴代1位の99期を誇る羽生九段の全盛期、すなわち七冠達成前後の強さと、現在の藤井五冠を徹底比較。誰もが気になる「史上最強の棋士」を決めるべく、シミュレーションを開催することに。

 当然ながら羽生九段が25歳にして七冠を達成した時、藤井五冠はまだ生まれてもいない。ひとまず、藤井五冠と羽生九段の直接対決の勝敗を見てみよう。

 公式戦での初対戦は18年2月の朝日杯将棋オープン戦準決勝。当時弱冠15歳の藤井五冠が勝利し、その後に朝日杯を制している。公式戦通算成績では、藤井五冠の5勝1敗。非公式戦を含めると8勝2敗になる。

 つまり10代の藤井五冠と現在51歳の羽生九段を比較した場合、軍配は明らかに藤井五冠に傾く。しかし、ベテラン観戦記者がこれに反論する。

「将棋の世界では、10代から20代前半までが最も伸びる時期で、『若い棋士が強い』というのは常識です。羽生さんは今年度、名人在籍時も含め29年間維持した将棋界最高峰の『A級』から陥落することが決まりましたが、初タイトル獲得から30年以上、今日まで常にタイトル争いに絡み続けている方が異常なこと。羽生さん自身も、過去にインタビューで『若い頃のほうが瞬発力、発想力は高かった』と答えていますし、個人的にも、若かりし羽生さんなら今の藤井さん相手にでも『羽生マジック』で勝利をもぎ取るんじゃないか。そう感じます」

 では、データ面から現在の藤井五冠と当時の羽生九段を比べたらどうなるだろうか。

*藤井聡太五冠VS全盛期の羽生善治七冠「最強はどっちだ」【2】につづく

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