赤字路線見直しの布石だろうか、JR西日本が利用者の少ないローカル線の収支を明らかにする方針を表明した。対象は1キロ当たりの1日の平均利用者が2000人に満たない「運行困難」とされる区間。これによりどこが“お荷物”なのかが明らかになるので、沿線住人は気が気でないだろうし、鉄道マニアもその成り行きから目が離せないだろう。
「JR西は『鉄道事業実績報告書』というものを毎年作成して国交省に報告していますが、これに基づいた17路線30区間がその対象となります。この2020年度版を見ると、1日当たりの利用客が極端に少ないのが芸備線(岡山、広島)の東城〜備後落合の9人、木次線(島根、広島)の出雲横田〜備後落合の18人です。芸備線は100人を超えない区間が他にもあって、木次線は全線で200人を超えていません。これ以外では因美線(鳥取、岡山)、岩徳線(山口)、山口線(山口、島根)の複数区間、小野田線(山口)、美祢線(山口)の少なさが目に付きます」(経済ジャーナリスト)
地方の過疎化や少子高齢化で今後の運営はさらに困難になるのは明らか。大糸線や芸備線の一部区間では既に地元との話し合いが行われている。国交省も危機感は共有していて、2月14日にローカル線をどうするかを議論する有識者会議が立ち上げられている。つまり今回の方針は、行政の動きに同調しているということだ。
利用が少ないのは山陽・山陰辺りに集中しているが、そこで注目されるのが岸田内閣で国交大臣になった斉藤鉄夫氏だ。
「鉄道好きの政治家では自民の石破茂氏や国民民主の前原誠司氏らが有名ですが、公明の斉藤大臣も下の名前が示すように自他共に認める『テツオ』として知られます。議員会館の事務所にはたくさんのNゲージが並べられていて、特に島根と東京を結ぶ寝台特急のサンライズ出雲には、自身が若い頃に上京した際に利用したことから思い入れは強いようです」(大手紙記者)
斉藤大臣は島根で生まれて広島で育った。だから今回の問題は正に地元の問題でもある。開通が延期となったリニアの問題では静岡県の反対もあってタジタジだが、さてこっちの問題ではどんな手腕を振るうのか。
(猫間滋)