藤井聡太“最年少四冠”は伝説の大名人を超えた【1】「羽生七冠」を上回る驚異の勝率

 まさに昇り竜だ! 棋聖、王位、叡王に続き、最高峰のタイトル・竜王を奪取。史上最年少の19歳3カ月で「四冠」を達成した藤井聡太新竜王。令和の棋界は天下布武の「八冠独占」へと流れ込むのか。その強さ、実績、探求心で昭和・平成に偉業を残した伝説の大名人を凌駕しつつある。

 11月13日の七番勝負第4局、豊島将之九段(31)を相手に怒濤の4連勝を決めた藤井聡太新竜王(19)。最年少四冠の誕生により、棋界は一気に「藤井時代」へと加速した。

 昨年7月に藤井竜王が更新するまで、タイトル獲得の最年少記録を保持していた屋敷伸之九段が目を細める。

「今回、将棋界最高棋戦の竜王戦で豊島さんを倒して序列1位となり、名実ともにトップに立った。今年に入り、棋聖、王位と防衛、叡王、竜王と立て続けにタイトル奪取、今年度中に王将挑戦で五冠になる可能性がある。今後、誰が藤井さんを止めるのかが、ファンの興味の焦点になってきます」

 竜王3連覇を逃した豊島将之九段は無冠へ。代わって藤井新竜王が序列1位となった。将棋連盟公式サイトの名鑑では、渡辺明名人・棋王・王将(37)、永瀬拓矢王座(29)の上位となる最高位に、あどけない藤井竜王の笑顔が掲示されたのだ。

 メディアも「藤井時代」の到来を喧伝する。14日付の「朝日新聞」では、羽生善治九段(51)、大山康晴永世名人(92年没、享年69)などこれまでに四冠を達成した大御所棋士の写真をズラリと並べ、その偉業を報じている。26歳で四冠を達成した中原誠十六世名人(74)は、

「10代での四冠は驚きを通り越している」

「A級に上がって、いずれ名人になるだろう」

 と、惜しみない称賛の声を寄せているのだ。

 将棋ライターの松本博文氏が解説する。

「記録の上では藤井竜王が大山永世名人、羽生九段に匹敵、または超越して、歴史に名を残す棋士になることはすでに確定している」

 松本氏が注目したのは年間勝率記録だ。今年の藤井竜王の公式戦の対戦成績は41勝7敗、勝率8割5分4厘(11月17日現在)。ちなみに2位の渡辺名人は14勝9敗(勝率6割9厘)と、2割以上の大差をつけている。

「これを僅かに1厘差で上回るのが、中原さんが67年に作った勝率8割5分5厘です。50年以上破られていない大記録ではありますが、これを達成したのはC級5段の時代です。現在タイトル保持者として、トップクラスの棋士と対戦している藤井竜王の強さはケタ違い。むしろ比較すべきは羽生九段が95年度に七冠を達成する過程で記録した8割3分6厘ですが、これはすでに上回っています」(松本氏)

 ちなみに、藤井竜王は4年連続で8割5分に近い勝率を挙げており、今年度の猛接近で「不倒記録」を更新する可能性は高い。

「藤井竜王は初タイトルの棋聖戦から一度も番勝負で負けなし6連勝。これは時代が違えど、名人5連覇を成し遂げた木村義雄永世名人(86年没、享年81)の偉業を抜いたことになります」(松本氏)

 いやはや伝説の名人を引き合いに出すほど比類なき強さなのである。

*「週刊アサヒ芸能」12月2日号より【2】につづく

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