アメリカの世界最大の政治リスクコンサルティング会社の「ユーラシア・グループ」は毎年、新しくなった年に世界が抱える「10大リスク」なるものを発表しているのだが、今年はそのトップに北京五輪を控える中国が採っている「ゼロコロナ政策」を挙げ、失敗して世界経済が混乱する事態を予測したことで、真実味のある話として話題になっている。というのも目下、中国国内ではその「ゼロコロナ政策」を巡って騒然とした状況にあるからだ。
「中国中央部の陝西省の省都、西安では20年12月に始まった武漢でのコロナ蔓延以来のパンデミックが起こっており、その数は一時1600人以上に及んでいました。アメリカやヨーロッパの数に比べれば大した人数ではありませんが、中国は感染をゼロに抑えるのに躍起となって、まさに国の威信をかけている最中ですから、共産党政権にとっては大問題です。そこで犠牲になっているのが、西安市民。住民1300万人が12月24日にロックダウンで市内に閉じ込められている上に、食べ物も不足するような状況になって怒りの声が高まっているのです」(中国事情に詳しいジャーナリスト)
まずは中国国内のネットでの反応だが、31日には外出禁止令を破って外出した男性が防疫に当たる職員に暴行を受けて、買ってきた餃子が路上に転がる映像が拡散。もちろん暴行映像は後に削除されたものの、これを受けて「西安での食品買い出しは困難」といった意味合いのハッシュタグの投稿には3億8000万以上のアクセスがあり、食糧難は誰もが知るところに。
また国営メディアが報じたところによれば、ロックダウンの噂が広がると山中をかき分けながら検問所を通り抜けて100キロも歩いた男性がいたが結局は見つかって隔離に。さらに別の男性は故郷に帰れなくなると、氷点下近い夜間を10時間もかけて自転車で移動したが、これもあえなく隔離されたという。中国が行うゼロコロナ政策のヤバさは当の中国人が一番知っているということか。
「西安はかつて長安と呼ばれ、シルクロードの東の起点に当たります。だから国外からの人の流入があってコロナが蔓延したわけですが、五輪が開催される北京は国内からも人の流入が制限されて防御壁の中にあります。つまりコロナが侵入しても地方都市で潰して北京は無傷なままにしておくというのがゼロコロナ政策の1つの側面なので、言ってみればトカゲの尻尾切り。そのために生活が犠牲にされる人々にとっては堪りません」(同)
五輪開催は2月4日。幸いにも西安の感染者は収束に向かっているというが…。
(猫間滋)