12球団合同トライアウトが行われ、今年は33選手が受験した。
「昨年は56人が参加しましたので、今年は少なかったですね。戦力外を通達され、すでに第二の人生を考え始めた選手もいたのかもしれませんし、トライアウトを受験しないで他球団からのオファーを待つと決めた選手もいたと思われます」(取材記者)
メットライフドームのスタンドには各球団の編成担当スタッフが集まり、熱い視線を送っていた。しかし、意外な発言も聞かれた。このトライアウトの顔ぶれは「今年5月のGW明けには想像できた」(某球団スタッフ)というのだ。どういうことか?
チームによって若干の違いはあるが、新人で入ってきた選手に対し、球団は一定の目安を設けているという。例えばバッターなら練習試合とオープン戦を含めて1000打席、ピッチャーなら100イニング。この結果をもって戦力か否かの判断をする。実は5月のGWぐらいには、ファーム首脳陣が1回目の協議を開き、そこで“戦力外”に関するだいたいのリストが出来上がっているのだそうだ。
「例えば800打席バッターボックスに入った選手がいるとすると、『この選手に1000打席まで与える価値があるのかどうか』、そんなふうに話し合いがされることもあります」(同)
成長、進歩がみられない選手は「与える価値ナシ」と判断される。それでも、本当に努力している選手であれば、担当コーチが「あと100打席でいいから与えてやってくれ」と言ってかばうそうだ。同時にファーム戦後に相手チームのコーチを訪ね、「ウチではチャンスがなかったけど、本当に頑張っているから」と売り込みを掛けることもあるという。
こうした動きは、球宴明けまでの話。その後、努力が実って数字にも現れるようなった選手は生き残り、1000打席を消化して結果を出せなかった選手は“ジ・エンド”となる。
そうして合同トライアウトに挑むのだが、一発本番で他球団編成スタッフの目に留まり、再起を果たすケースは極めて稀だと思えるが…。
「プロ野球のコーチはチャック式の黒い小さな手帳を持ち歩いていますよね。その中に目についた他球団の選手のデータも書き記されているんです。システム手帳のようになっていて、ファイリングする紙資料は毎月、球団が作成し、内々にコーチに渡しています」(同)
監督、コーチが“黒革の手帳”を開き、何かを書き込む時は要注意だ。トライアウト受験選手の未来は明るいものであってほしい。
(スポーツライター・飯山満)