JR東日本は5月12日、新幹線eチケット(トクだ値)では初の「タイムセール」を実施すると発表した。トクだ値とは、会員制予約サービス「えきねっと」で発売される割引きっぷのことで、今回は通常料金から「60%オフ」になる商品が発売されるという。
対象となるのは秋田新幹線「こまち」、山形新幹線「つばさ」、上越新幹線「とき」の普通車指定席で、6月2~22日乗車分が驚異の60%オフに。例えば「こまち」を利用した東京-秋田間は、通常1万7820円が7120円に。片道あたり1万700円おトクになる計算だ。また「つばさ」を利用した東京-山形間は、通常1万1250円が4490円になるというのだから、インパクトはかなりのものだ。
これには鉄道ファンもかなり衝撃を受けたようで、はやくも「発売開始の5時には必ずスマホ前で待機」といった声が上がっている。もっとも一部からは「アクセス集中で繋がりにくくなりそう」との懸念も散見されており、チケットの争奪戦が繰り広げられる可能性は高そうだ。
JR東日本が「タイムセール6割引」を実施した背景には、大きく分けて次の狙いが考えられる。まず割引率を高めて期間限定で販売することで、ゴールデンウィーク後の閑散期に旅行需要を掘り起こし、空席の目立つ東北・新潟方面の座席利用率を向上させること。さらにオンライン専用商品を強化することで、紙の切符発券に伴うコスト削減や顧客属性データの取得を促進し、顧客接点のデジタル化を加速させる狙いもあるだろう。
「割引対象を秋田、山形上越新幹線に絞ったのは、東北・新潟の観光需要を喚起し、国内旅行の掘り起こしを通じて地域経済への貢献と鉄道運輸収入の拡大を狙うためでしょうね。えきねっとへの新規会員登録などで獲得した会員データを活用して、今後のマーケティングやサービス改善につなげる意図も見えます」(鉄道ライター)
このタイムセールは、JR東日本が掲げる「変革2027」の一環として、デジタル化推進と地域観光振興を両立させる戦略的施策といえる。これを機に、東北・新潟方面に足を伸ばしてみるのもいいかもしれない。
(ケン高田)