5月30日に開幕した全仏オープンで、記者会見に応じないどころか大会そのものへ2回戦参加をせず棄権した大坂なおみ。テニス関係者やメディアでは、「(会見で)話すのも仕事」といった否定的な意見や、棄権と同時に2018年からうつ病を患っていたことを公表したこともあって、「勇気ある行動」などと賛否両論飛び交って全世界的な話題となっている。
もともと自由奔放な言動で物議を醸すことの多い大坂だが、4大大会からの追放まで言及され、となるとそのなりゆきが大いに気になるのは大坂のスポンサーサイドだろう。
アメリカのスポーツメディアが5月25日に発表した21年のスポーツ選手長者番付によれば、大坂の年収は約60億円で、うち大会賞金が5億7000万円、残りの54億円のほとんどはスポンサー収入と思われる。そこで大坂の公式ホームページを見ると、彼女の公式スポンサーとして、日清食品、ナイキ、ANA、資生堂、ヨネックスなど15社が確認できる。
「そのうち一番の大口と思われるのがナイキです。大坂は19年にそれまで9.5憶円で年間契約していたアディダスからナイキに電撃移籍しました。ということは当然、それ以上の金額が動いたはずです」(スポーツライター)
ではそのナイキは今回の騒動をどう思っているかと言えば、6月1日に激励のメッセージを送り、「私たちはその勇気をたたえ、彼女の回復を祈りつつ」とし、支援を続けるとしている。
大坂だけでなく同じ日本人テニスプレイヤーの錦織圭もスポンサードし、ホームページのスポンサー一覧の中でもトップに掲げられて大口と思われる日清食品はどうかと言えば、こちらも「一刻も早い回復を祈念」とあり、ということは支援を続けるということなのだろう。
大坂と一番長い付き合いなのが、ヨネックスだ。なにしろ大坂がまだ10歳の頃から支援していたというから、専門メーカーとしての気配りが伺える。そのヨネックス、5月上旬にイタリアの大会で大坂が2回戦をストレート負けして、ストレスからラケットを地面に叩きつけて破壊した時には、「今回のような行為は望みません」と彼女を諫めるようなコメントを出していたが、今のところ沈黙。ちなみに同社のツイッターのトップ画は大坂だ。
大坂は昨年、全米オープンで優勝を飾ったが、大会を通じてアメリカで起こった黒人差別事件へ抗議。大会前には、「アスリートは発言を行う度にスポンサーを失うことを恐れている」とアメリカ誌に語り、スポーツ選手がメッセージを伝えることの困難を語っていた。
ということは、今回の言動もその危険性を考慮した上での発言なのか。いずれにせよこの問題、しばらくは大坂の言動と世論の行方が注目される。
(猫間滋)