大坂なおみ「全豪連覇」のカギを握る理論派コーチのデータ分析

 大坂なおみが全豪オープンで2戦連続ストレート勝ちし、3年連続の3回戦進出を決めた。昨年12月に発表した新コーチ、ウィム・フィセッテ氏との相性も良いらしく、同じオーストラリアが会場のブリスベン国際大会ではベスト4入りしており、「全豪オープン連覇」への期待も高まっている。

「フィセッテ氏は理論派で、相手選手の傾向やゲームの特徴を分析し、的確なアドバイスを送っています。大坂も彼のアドバイスが『分かりやすい』と話していました」(専門誌記者)

 フィセッテ氏は過去4人を4大タイトル覇者に導いている。その精緻な戦略作りの舞台裏が少しずつ見えてきた。まず、彼はドイツの大手ソフトウェア会社「SAP」とパートナーシップ契約を結んでいて、同社に試合データやサーブやショットの打ち込まれる位置などを数値化してもらっているそうだ。その数値化されたレポートを見て、対戦相手に対して抱いているイメージと同じどうか、違っていればなぜそう思ったのかなどを考える。それにより相手の弱点を見つけ出し、大坂に与えるアドバイスになるそうだ。

「大坂は『データ戦略はフィセッテ氏に任せっきり』と話していました。彼と契約した選手は、データに対する取り組み方もさまざまで一緒に考えたいという選手もいれば、大坂のように任せっきりの選手もいるそうです」(特派記者)

 フィセッテ氏と契約するSAP社は、対戦の可能性がある選手の映像を撮る。しかし、フィセッテ氏はこれまでとは違い、大坂本人の試合も事細かに撮影させているという。それは大坂自身の弱点を知るためでもあり、「作戦を忠実に実行しているか」を確認するためでもあるそうだ。

「大坂は『感性の人』。気持ちがノッているときは強いが、落ち込んでしまうと全然ダメ。そういう起伏を乗り越えて、さらに強くなるためにフィセッテ氏をコーチに招いたんですが、せっかく立てた作戦も実行できなければ意味がありませんから」(同前)

 大坂はフィセッテ氏の助言を素直に聞き入れるものの、試合中は夢中になって忘れてしまうこともあるのだという。理論派コーチが撮影カメラを大坂にも向けさせた本当の理由は、起伏の激しい性格に手を焼いているからかもしれない。

(スポーツライター・飯山満)

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