虎党待望の「生え抜きスラッガー」の誕生や!
4球団が競合した末、ドラフト1位で入団した阪神・佐藤輝明(21)が、前評判以上の大活躍で開幕スタメンを手中に収めている。
春季キャンプに同行した在阪スポーツ紙記者が鼻息を荒くする。
「長打力はピカイチ。風に乗ったとはいえ、打撃練習でバックスクリーンを越える150メートル弾(推定)には腰を抜かしました。あんな打球を見たのは、03年に宜野座にキャンプ地を移してから初めてちゃうかな。大学3~4年生の頃の打率が芳しくなかったから、球団は即戦力として考えてなかったみたいやけど、2月18日のDeNAとの練習試合でもスコアボードを越える超特大ホームランを放った。契約最終年の矢野燿大監督(52)にしたら、うれしい誤算でしょうね」
2月25日までの9試合で33打数14安打8打点、打率4割2分4厘のハイアベレージを記録。本塁打は2本だが、大学時代は通算14本塁打を放ち、関西学生野球リーグの最多本塁打記録を更新した、まさに「和製バース」とも言える逸材なのだ。
現役時代に「代打の神様」として活躍した阪神OBの八木裕氏も佐藤の打撃センスに太鼓判を押す。
「打撃に穴のない選手です。ミートポイントが広いので、インコースのストレートや緩い変化球など、どのボールにも対応できている。レフト方向に大きい打球を飛ばせるのも魅力で、あのフルスイングはソフトバンクの柳田悠岐選手(32)を彷彿させます。将来的には柳田選手を超える可能性も秘めていますね。1年目のスタート時を比べると、柳田選手より佐藤選手のほうが数段上ですから」
「和製バース」にしろ「虎のギータ」にしろ、猛虎打線の中軸として期待はいやが上にも高まるが、規格外なのは打撃センスだけではない。ベテラン顔負けの図太い性格も、プレーに好影響を及ぼしている。
「立ち居振る舞いや練習に取り組む姿は、長年在籍していた選手のようなオーラが漂っています。本来1年目のキャンプは、緊張しまくりの中で練習するものですが、先輩やスタッフと自然にコミュニケーションを取っている。肝が据わっているのか、実戦で臆することなくバットを振れていることが、好成績につながっているのでしょう」(八木氏)
そんな佐藤のケタ違いの大物ぶりはキャンプ初日から出力全開だった。在京球団のスコアラーが話す。
「打撃練習中にマシンの調整が狂って、コントロールが少し乱れる場面があった。普通の新人選手であれば、多少ボールが荒れていてもそのまま打ち続けるものですが、佐藤は打席を外して『調整してください!』と注文をつけていた。並の新人ではないな、と思いました」
阪神OBの中には「のちに外野から内野へのコンバートは難しい」ことを理由に「最初から内野手として育てたほうがいい」という声も少なくない。
だが、現役時代に内外野でレギュラーを務めた野球評論家の駒田徳広氏は「若いうちは、いろいろなポジションを経験するべき」と前置きして、こう続ける。
「ポジションを固定しないと大成しないという考えも一理ありますが、起用する側からすれば、複数のポジションを守れるメリットは大きい。佐藤選手は動きが軽快でハンドリングもうまい。年を経てから三塁手に固定しても遅くないはずです。元巨人の高田繁さん(75)のように、10年以上守った外野から三塁手にコンバートされた年に『ダイヤモンドグラブ賞』(現・ゴールデングラブ賞)を受賞した例もありますからね」
佐藤ほどの逸材であれば、それをも実現してしまいそうで特に心配はないのかもしれないが、重要なのは内野か外野ではなく、左右の順応性だという。
「ポジションの左右チェンジに対する順応は難しいんですよ。利き手や利き目があるように、人によって左右の得手不得手があるんです。同じ外野でもライトとレフトでは打球の質や球場の景色もガラッと変わりますからね。私自身、レフトよりライトのほうが得意でしたし。佐藤選手の本職が三塁手であれば、レフトを守らせたほうが得策だと思います」(駒田氏)
起用法について首脳陣は頭を悩ませることになりそうだが、球団フロントはウハウハ状態だ。
「佐藤が大学時代から熱狂的に追っかけているアイドル『ももいろクローバーZ』の推しメンがメンバーカラー紫の高城れに。センターではない子に夢中なところが〝虎ジョ〟たちの好感度アップの鍵になっていて、佐藤グッズの売り上げも期待されています。しかも今後は、ももクロと佐藤のタイアップでひと儲けする計画もあるそうです」(球界関係者)
女性人気も重要となるスーパースターの育成は、球団の至上命令。「虎の至宝」をどう育てていくのか、矢野監督の腕の見せどころだ。
■「佐藤輝明」プロフィール
生年月日:1999年3月13日(21歳) 身長187センチ・体重94キロ
出身地:兵庫県西宮市 経歴:仁川学院高等学校〜近畿大学
通算本塁打:高校20本/大学14本
プロ入り:2020年ドラフト1位
契約金/年俸:1億円/1600万円
※「週刊アサヒ芸能」3月11日号より