アメリカの国技と呼ばれるアメリカンフットボールにおいて11月28日、歴史的な出来事が起こった。ヴァンダービルト大学で女子サッカー部に籍を置く4年生のサラ・フラー選手がミシガン大学とのアメフト公式戦に出場し、キッカーとしてプレーに参加したもの。スポーツ界で性別の壁を破ったこのニュースは全米を揺るがすこととなった。
「カレッジフットボールではこれまで6人の女子選手が誕生していますが、フラー選手は『SEC』という強豪カンファレンスでプレーした初の女子選手として大きな注目を浴びることに。全米のメディアがこの衝撃デビューを快挙として報じており、ヒラリー・クリントン元国務長官も祝辞のツイートを送っていました。この話題が大きく取り上げられることにより、日本スポーツ界に残る『性別の壁』にも注目が集まることは確実でしょう」(スポーツライター)
日本で最も人気のあるスポーツと言えば野球だが、意外なことに野球では性別の壁が少ないという。大学野球ではかつて2001年に東大の竹本恵投手と明治大の小林千紘投手が東京六大学野球の公式戦に登板。プロ野球(NPB)でも合格者こそいないものの、トライアウトでは女子選手に門戸を開放している。ところが未だ、かたくなに女性の参加を拒んでいる組織があるというのだ。
「高校野球を統括する高野連が未だに女子選手の参加を禁じているのは広く知られるところ。甲子園では2017年から試合前の練習に参加することが “制限付き”で解禁されましたが、未だに多くの都道府県連盟で禁止しています。その理由は《硬球だから女性には危険》という曖昧なもの。それならソフトボールは危険ではないのか、野球経験者の女性でも未経験者の男性より危険なのかといった議論は置き去りにされているのが現実です」(前出・スポーツライター)
硬球に関しては中学生が参加する日本リトルシニア中学硬式野球協会では女子選手の参加を認めており、大学野球は言わずもがな。高校野球だけが硬球を理由に女子を締め出しているのが実情なのである。
「春のセンバツは毎日新聞が、夏の甲子園は朝日新聞が高野連と共催。この2紙は性別問題に敏感なはずなのに、高校野球の女子禁制にはなぜ無関心なのでしょうか。毎日新聞では11月29日付の紙面でサラ・フラー選手の話題を取り上げていましたし、ぜひ高校野球にも切り込んでもらいたいものです」(前出・スポーツライター)
横浜DeNAベイスターズが主催するベースボールスクールでは、3人の女子コーチが指導に当たっている。そういった環境から未来の女子高校野球選手が現われるのかもしれない。
(北野大知)