「新素材のバット」が高校野球にも影響を与えそうだ。
京大、北海道大が共同研究し、東大野球部などでテスト使用されてきた「ダケカンバ製バット」の成果発表が行われた(12月16日)。
「メープルより柔らかい」「打球が飛ぶ」などの感想が伝えられたが、注目すべきは“国産”であること。ダケカンバは北海道に広く生息する広葉樹で、現在、木製バットの主流素材となっているメープル、ホワイトアッシュはほとんどが「輸入品」である。国産のアオダモの植林も行われているが、近年、バットの価格が上がった理由は「輸入」「素材不足」によるものだ。
研究員たちは「早いうちに商業ベースに乗せたい」と言うが、一部の大学野球、社会人ではすでに使用が許可されている。市場販売されれば一気にこの「ダケカンバ製バット」が定着するかもしれない。
「素材を輸入品に頼らなくて済む分、店頭価格は従来の木製バットよりも安くなると思います。ただ、研究に費やした費用や時間もあるのですぐに激安価格にはできませんが」(スポーツメーカースタッフ)
バットといえば、高校野球でも新基準の金属バットが使用されることが決まっている。高校野球の試合は「打高低投」の傾向にあり、打球速度も上がっていた。バッターとピッチャーの対決のバランス、打球速度を落とすことでマウンドにいる投手の安全性を確保するための新基準だが、そもそも、高校野球で金属バットが導入された背景には“おカネの事情”もあった。「長く使用できる金属バットのほうが出費を抑えられる」と判断されたからだが、こんな指摘も聞かれた。
「ダケカンバ製バットがリーズナブルな価格で販売されるのなら、高野連も導入するのではないか」(アマチュア野球記者)
もっとも、プロを目指す高校球児でも「練習は木製、試合は金属」と使い分けているのが実情で、高校球界全体が木製バット主体に戻ることはないだろう。
「もし、新基準の金属バットが『ホームランが出にくい』と認識されれば、ダケカンバ製バットを使いだす高校球児もいるかもしれません。大学、社会人、プロと次のステージを見据えて。高校生の国際試合は木製バットが使われていますし」(同)
「金属バットよりも安い」となれば、状況も変わってくるはず。ダケカンバ製バットが学生野球の光景を変えるかもしれない。
(飯山満/スポーツライター)