「夏の甲子園」中止で「ドラフト」の目玉は? スカウトマンの苦悩と打開策

 夏の甲子園大会の中止が発表され、プロ野球のスカウトマンたちは、一様にドラフト会議への影響を口にしていた。指名対象の3年生の成長を確認することもできなければ、地方にいるお目当ての選手が全国レベルで通用するのかどうかも分からない。また、自身が推す選手をその地区の担当スカウトに確認してもらうという作業もあるそうだ。

 こうした状況から「今年のドラフト指名選手はどの球団も少なくなる」とも予想されているが、実際は違うようだ。

「スカウト活動とは有望な学生球児の成長を見届けるものであって、各球団とも、年度ごとの指名リストを3年先まで持っています。ドラフトの上位指名が看板選手、即戦力だとすれば、下位指名は育成メインです。その上位の即戦力選手の指名だけで切り上げ、あとは育成枠という方法もあります」(球界関係者)

 甲子園大会の中止で、実戦を視察する機会が失われたのは事実。穿った見方かもしれないが、もともと育成メインの下位指名予定だった選手を育成枠にまわせば、契約金と年俸を大幅にカットできる。各球団ともペナントレースが開催されても無観客試合は避けられないため、収入源は必至。指名選手を確保しながら支出を抑える方法として、「育成枠をフル活用する」というのだ。

「今季は戦力外選手を出しにくい。支配下登録の人数も影響してくるので、やはり、ドラフト会議は育成選手が多くなりそう」(ベテラン記者)

 巨人・原辰徳監督が「卒業後も野球を続けたい」とする高校球児を集め、実戦形式のオーディション(トライアウト)を行う私案も挙げていた。プロのスカウトだけではなく、社会人、大学関係者なども視察できるようにしたいとも語っていた。原監督の意見に賛同するプロ野球関係者も多いが…。

「開催するのなら、9月上旬までにやってもらわないと…。夏の甲子園大会がないとなれば、2年生以下の新チームの始動が前倒しされることになります。卒業後にも野球を続けたいとする3年生と、これから鍛え上げていく1年生と2年生は練習内容も違ってきます。高校野球の現場を混乱させないためにも、高校生を対象としたトライアウトを実施するなら早く決めてあげてほしい」(前出・ベテラン記者)

 プロ野球ドラフト会議、進路問題、高校野球の再スタート。育成枠でのプロ入りと進学を天秤にかけ、進路に悩む高校球児も少なくないそうだ。野球界には、早急に着手しなければならない課題が山積みのようだ。

(スポーツライター・飯山満)

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