コロナ禍において「供給不足」が指摘され続けた消毒液が、ようやく国内で流通し始めた。
消毒液といえば、酒造メーカーが医療機関向けに「高濃度エタノール製品」を販売するなど、民間企業が率先して品薄状態の解消に努めてきたが、ここにきて政府の「あっせん品」にブーイングが起きているという。
兵庫県医師会や県などに聞き取り取材し、診療所約60カ所が「高額消毒液」購入を拒否していた、という事実を明らかにした「神戸新聞NEXT」(5月21日配信)によれば、《兵庫県では4月中旬までに、県医師会が診療所を対象に希望する分量を調査。その時点で国や県からは製造元や商品名、価格、配布時期は示されず、必要量を取りまとめた後に約10種類の製品リストや価格が分かったという》という。
ところが、5月上旬、神戸、加古川市など診療所計約950カ所に、消毒液計約7200リットルが代金引換の形でいきなり届いたというのだ。しかも、《消毒液は安価な種類だと1リットル千円程度だが、届いた製品は同約4千円。さらに手数料や送料も加算されていた。商品を送りつける詐欺と誤解した診療所もあり、受け取りを断るケースが続出。費用負担が大きいため、今も返品を求める声がある》(同サイトより)という。
それはそうだろう。勝手に品物を送りつけてきて代金のほか、手数料や送料を支払えと言われたら「ふざけるな!」となるはず。これでは「送り付け詐欺」といわれても仕方がないだろう。
当然のことながら、報道に対し、ネット上では医療従事者と思われるユーザーからの怒りの声が相次いだ。
《3リットルで13000円以上する消毒液が代金引換で届きました。送りつけ詐欺だと思ってスタッフたちと相談して受け取りを拒否。あとで調べたら国からのあっせん品でした》
《消毒液がようやく入荷。安いものだと1リットルで4000円前後。相場の3倍以上で押し売りするなんて、国はいったいどんなルートで仕入れているの?》
《高額すぎる消毒液を病院に代金引換で送りつけてくるとか詐欺か。アベノマスクといい、政府に協力する業者の闇をとことん暴いてほしい》
などなど、政府に対する怒りのコメントに包まれた。
そんななか、政府はアルコール消毒液などのネット上での高額転売などを禁止するため、政令を閣議決定。5月26日から施行されることになったが、「今回の決定では個人や業者が仕入れ値を超える価格で消毒用アルコールを転売できなくなり、違反すれば罰則の対象になった。ただ、そうなればマスク同様、在庫を抱えた業者たちの投げ売りが始まり、価格が急落することは目に見えている。政府はいったい何を考えて、このタイミングで医療機関に法外な値段の消毒液を売りつけていたのか……。この事例一つとっても、政権の指導力のなさを痛感しますね」(医療ジャーナリスト)
マスク、消毒液ときて、体温計も品薄だといわれる今。買い占めによる高額転売は論外としても、政府が代金引換で「高額消毒液」を押し売りしていたとは、医療機関が不憫でならない。
(灯倫太郎)