中央競馬は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2月29日から無観客で開催されているものの、ターフでは以前と変わらず白熱したレースが展開されている。
1頭分のスペースを争うジョッキー同士の激しい攻防は、競馬の見どころのひとつだが……。
あわや大事故につながりかねない「事件」が起きたのは3月20日、中山で行われたGⅢフラワーCだ。
最後のコーナーを4番手で回った田辺裕信(36)のショウナンハレルヤと、その左後方にいた池添謙一(40)のポレンティアが直線に向くや、何度も馬体をぶつけ合うシーンが見られたのだ。
「最初、田辺の馬が外に膨れるような形で接触しましたが、その後は、池添が右のほうに馬を向けて体当たり。すると今度は、田辺が上体を左に向けて左ヒジでやり返す。そんな意地の張り合いが5回も繰り返され、最後は田辺が引く形になりました」(競馬ライター)
結果は池添が7着、田辺は12着。裁決では「馬群が密集する中で、複数の馬のわずかな動きにより両馬が接触したもの」として、制裁はなかった。
しかし舞台裏では、そう簡単に収まっていたわけではない。
「レース後、田辺は『直線でぶつかってしまい、勢いが止まってしまった』と、審議にならないことが不満そうで、ショウナンハレルヤの矢野英一調教師に至っては『馬がケガをしたらどうするんだ』と池添に対して怒っていました。一方の池添は『直線で何度もぶつけられる不利があった。不完全燃焼な競馬になってしまい、申し訳ありませんでした』と、ファンに対しては謝罪のコメントを出していますが、両者とも譲らない格好でしたね」(美浦トラックマン)
いずれにしても、このバトルにより、両馬とも春の牝馬クラシックへの出場が遠のいたことは間違いないが、美浦トラックマンは田辺を擁護する。
「池添は勝負へのこだわりが人一倍強く、スタートから貪欲に好位を取りに行くし、内が空いたと見るや、すかさずそこに入り込んで行くアグレッシブな騎乗がウリ。ただ、今回はそういう思いが裏目に出た感じです。もし、あそこで田辺が引かなければ、大事故になった可能性も十分ありますから」
無観客の中で繰り広げられる騎手同士の激しいバトル。こうした「遺恨の火種」が、燃え広がらないといいのだが‥‥。