補強がうまく行き過ぎるのも功罪あるようだ。
東北楽天ゴールデンイーグルスは守護神・松井裕樹を2020年から先発に転向させる。もともとは「左の先発投手」として期待をかけられていた。しかし、プロ2年目に「勉強を兼ねて」でリリーバーに配置換えされ、そこで結果を出し今日に至っている。
「松井は24歳で通算139セーブを挙げています。『20代で250セーブ達成、名球会入り』とも言われていました」(地元紙記者)
その松井の先発転向によって、今オフの補強がより強固なものに見えてきた。来季の先発ローテーション入り候補は、則本、岸、涌井、松井、そして、19年にブレイクした石橋。塩見、辛島、弓削、若手の藤平と安楽もいる。松井の抜けたリリーフ陣もFAの人的補償により、千葉ロッテから今季54試合に登板した酒居知史を得た。青山、ブセニッツ、宋が新守護神を争うとされ、
「もし松井が先発でうまく行かなかったら、クローザーに戻します。松井が先発で成功したら、新加入の牧田和久がリリーフか、クローザー。松井をクローザーに戻すのなら、牧田を先発に回す」(同前)
と、贅沢な声も聞かれた。「投手力だけならば、ソフトバンクよりも上」との評価もある。
その結果、「絶対に負けられない」のプレッシャーを一身に背負ってしまったのが、三木肇新監督だ。二軍監督からの昇格だが、前任の平石洋介氏(現ソフトバンク・打撃兼野手総合コーチ)は、則本、岸を前半戦に欠いた状態で最下位から3位に浮上させた。三木新監督は“現状維持の3位”では許されないはずだ。
「オフの補強に関しては、石井一久GMが進めています。三木新監督は新加入の選手に関するコメントすら出していません」(同前)
三木新監督だが、「監督」の肩書を持ったのは、19年の二軍監督が初めて。日本ハム、ヤクルトでの一軍コーチ経験はあるが、いきなり「勝って当然」「ソフトバンク以上の投手力」を持たされたことになる。
ちょっと早すぎるが、来季の楽天を優勝候補に挙げる声も出ている。オフの補強が凄すぎて、石井GMは結果的に三木新監督を追い詰めてしまったようだ。
(スポーツライター・飯山満)