日本ではジャニーズ事務所元社長の性加害問題で財界3団体トップがそのことに言及したり、政府が男性向けの性被害電話相談窓口を設置するなど、芸能界に留まらず広く社会問題化しているが、海を隔てた韓国では日本人が知らないところで「処理水」が芸能界を含め広く社会問題化していた。
「芸能界を巻き込んだのは、人気ロックバンド『紫雨林(ジャウリム)』の女性ボーカル、キム・ユナのインスタ投稿からです。彼女は8月24日に、『RIP(Rest in peace)地球』と書かれた画像をアップ。『数日前から私は怒りに包まれていた。ブレードランナー+4年、映画的なディストピアが現実になり始めている』とし、最後には『今日のような日、地獄が心に浮かぶ』とまで書き込んだのです。これによりコメント欄は『同感だ』『扇動するな』と大論争に。政界中央からも批判の声が上がる事態となりました」(外信部記者)
ちなみにブレードランナーとは、1982年に公開されたアメリカのSF映画。いきすぎた科学文明が迎える終末的な地球の未来を描いたSF映画の金字塔的作品だ。
政界から複数の批判が寄せられ、韓国与党「国民の力」の金起炫(キム・ギヒョン)代表までが、「常識に欠けた芸能人が多すぎるのではないか」と言及。与党青年最高委員も「芸能人がどれだけ偉いのか、言いたいことを言って何の責任も負わなくていいのか」と発言している。
すると9月13日、キム・ユナの所属事務所は「環境汚染に対する懸念を示したのみで、決して政治的な立場を表明したわけではない」と釈明コメントをインスタに掲載するに至った。韓国では国柄として左翼と右翼を峻別したがるが、左寄りの発言をする芸能人を「概念芸能人」と呼ぶ言葉もあって、韓国社会と芸能界の特殊性が窺える。
中央政界でも、19日には最大野党の「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表に対し、北朝鮮に11億円以上の不正送金があったとして、検察が逮捕状を請求するという動きがあった。
「李在明氏は、8月末からハンストを行っていたため、体調が悪化したとして病院搬送されて籠城戦を行うという事態になっています。そもそもハンストは、尹錫悦(ユン・ソニョル)政権が日本の処理水放出を容認したことに対する反対表明で行ったもの。韓国でも国会議員には不逮捕特権があるので、今後どうなるかで国民の注目を集めています」(同)
日本国民の多くがあまり知らないところで、韓国では国を二分するかのような大騒ぎが繰り広げられており、対岸の火事はかなり大きいようなのだ
(猫間滋)