「リバースモーゲージ」か「リースバック」かそれとも?賢い住まいの手放し方/佐藤治彦「ハッピーマネー講座」

「アサ芸ハッピーマネー講座その④」は、土地付き一軒家に住んでいた知り合いのA氏が、売却して小ぶりの賃貸マンションに引っ越した実例を紹介しよう。

 A氏が65歳を目前に退職したのは、週に3日の仕事が見つかったからだ。大した収入にはならないが、食費と光熱費は十分まかなえるという。さらに公的年金で、家賃に加えて衣類、家電、交際費というような出費もカバーできると計算。「これからは、のんびり仕事をしながら、妻と日本各地を少しずつ旅をして回ろうと思う」と言う。うらやましい第二の人生だ。

 しかも、引っ越し先は公共団体の住宅供給公社なので礼金や更新料はいらないし、周りの相場よりも安い。歩いて10分ぐらいのところに大型スーパーがあるので買い物は便利だし、近くのバス停から地域の基幹病院にも15分くらいでアクセスできるため、満足しているという。

「最初は住宅を売却したお金で、小ぶりのマンションを買い直そうかと思ったけれど、買っても管理費や修繕積立金、固定資産税など毎月3万、4万と出ていくので賃貸にした」

 これで、いざという時の老人ホームや介護付き住宅に移る時の資金がたくわえられるという。手元に4000万から5000万円もの現金ができたからだ。

 そして投資も始めた。

「佐藤さんの言うように、暴落した時に銀行や保険、電力会社といった手堅い株を買いました」

 毎日こまめに株価を見るようなことはせず、週に1、2度くらいで、テレビで大きな経済ニュースや株価が上がった、下がったという時にだけチェックしているという。

 去年8月の令和のブラックマンデーの時と、今年4月、トランプ関税の発表で暴落した時に計2000万円分を購入。平均的な配当利回りは4.5%。おおよそ90万円が配当金として毎年入ってくることになる。これで旅行やちょっとした贅沢な食事、観劇などをする時の資金にするそうだ。

 ただ、90万円の配当金といっても、その一部は税金で2割ほど減る。税金不要のNISAで買える1年間の上限額は240万円だからだ。

「なので買った銘柄を上手にNISA枠で買い換えて、配当金から取られる税金も減らしていく予定です。あとは妻とできるだけ健康で長生きするために、毎日の運動や健康的な生活に心がけています。そして引っ越してよかったのは、いちばんの心配事が片づいたことです」

 それは何ですか? と尋ねると、

「家で食事や洗濯、掃除の世話をしてくれていた30歳の息子を独立させることができたこと。引っ越しで家が小さくなることを知って覚悟を決めてくれた。あと、早めに断捨離ができたこともよかった」

 そう楽しそうに話すA氏だが、家を売るかどうかは最後まで悩んだという。それは、シニア層をターゲットにした住まいに関わる比較的新しい金融サービス「リバースモーゲージ」と「リースバック」で迷ったからだ。前者は住んでいる家を担保にお金を借りるもの。後者は家は売却するものの、そのまま賃貸として住み続ける方法である。

 リバースモーゲージの多くは、担保価値の50%までお金を貸してくれる。返済は死んだあと、家を売って返せばいいことになる。仮に4000万円の価値がある不動産だと判断してもらえれば、2000万円まで必要な時にお金を手にすることができる。

 ただ、お金を借りたら利子を払う必要があるし、家の価値を判断してもらうのに定期的に手数料もかかる。おいしい話かと思ったけど、諸費用がバカにならないことを考えてヤメた。

 リースバックは家の査定が安く、借りる時の家賃が高かったので割に合わないと判断したという。

 皆さんも賢い住まいの判断をしてもらいたい。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。最新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。

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