中国と宇宙協力協定を結び、月面探査を進めるなど、宇宙開発を活発化しているロシア。だが、月の平和利用だけではなく、種々の「宇宙兵器」の開発も企図していることが明らかになり、アメリカが「国家安全保障上の脅威」と強い警告を発する事態になっている。
「ロシアは数年前から宇宙での軍事開発に力を入れており、様々な宇宙兵器の実験を試みています。宇宙空間を牛耳ることができれば、西側諸国に対して軍事的、政治的に圧倒的優位に立てるからです」(軍事アナリスト)
一概に宇宙兵器といっても多種多様だ。宇宙から宇宙への兵器、宇宙から地球への兵器、地球から宇宙への兵器もあるという。
「この中で、具体性があり、世界がもっとも警戒するのが、他国の衛星を破壊する兵器です。例えば、核兵器を搭載した衛星を打ち上げ、他国の衛星に接近し爆発させることで、その国の衛星システムを無力化してしまうのです。衛星の破壊は、高度にIT化された現在の軍事システムに壊滅的被害をもたらします」(前出・アナリスト)
ロシアは2021年に、ミサイルを使って自国の不必要な人工衛星を破壊する実験を実施している。その際に大量の宇宙ゴミ(デブリ)を発生させ、他国の衛星とそのデブリが衝突する危険性を生じさせている。
「ロシアの軍事的な宇宙開発と見られる行為は2024年になっても続いていて、5月16日には『Cosmos 2576』という衛星を、高度2000メートル以下という地球低軌道に投入しています。ところが、この2576は、アメリカの偵察衛星と言われる『USA 314』と重なる軌道上にあるのです。このため、アメリカのロバートウッド国連代理大使は、5月に開かれた国連安全保障理事会で『2576は宇宙兵器であり、衛星破壊実験(ASAT)を目的としたものだ』と断言しています。しかも、ロシアには、2576をさらに先鋭化させた第2、第3の『宇宙兵器』を投入する動きもあるのです」(米軍事シンクタンクスタッフ)
宇宙空間における戦争という脅威は、すでに現実のものになっているようだ。
(田村建光)